通所者同士の悪口
【Q】
通所者同士の悪口に対するスタッフの対応はどうすればよいでしょうか?
【A】
デイケアの活動中やその前後に、通所者同士が悪口を言い合ったり、口論になることは程度の差はあれ、毎日のように起こり得ます。この場合、スタッフはまず冷静に対応することが一番大切です。おおげさな言い方のようですが、火災や地震、救急医療時の対応と似ています。放置すれば、大げんかや暴力行為にまで発展するものか、そうでなく、ふだんは言いたくても言えずに我慢していたことを思いきって口にしたり、言い合っているだけの場合もあると思います。前者の場合は、速やかにスタッフが協力して、興奮している人やその影響を受けている人に対処する必要があり、時にはデイケア以外のスタッフの応援も考える必要があるでしょう。後者の場合は、「けんかや口論は悪いことです。やめましょう」とすぐ介入するのは考えものだと思います。言いたいことを言い合った結果、互いの気持ちがすっきりしたり、以前よりも互いを理解することになり仲良くなれることもあるからです。
次にどうしてトラブルになったかを考えてみましょう。例えば、統合失調症の通所者に多いのですが、幻聴や被害妄想があるために、相手の悪口を言ったり、攻撃的になり口論となる場合があります。エスカレートしたり、またはしそうな場合は、まず当事者同士を引き離し、落ち着かせる努力をします。病状が不安定な時に起こりやすいので、主治医に連絡して薬物療法を工夫してもらうことで改善することも多いと思います。
また、スタッフには気配りも必要です。例えば、悪口を言われた人への配慮として、幻聴や被害妄想に基づく場合、相手のプライバシーに配慮しつつ、病気に基づくものであり、「病気を憎んで人を憎まず」の対応をアドバイスするとよいと思います。
出典:日本デイケア学会編『精神科デイケアQ&A』中央法規出版、2005.