コミュニケーションの環境づくり
【Q】
高齢者とコミュニケーションをとる際の環境づくりについて、何かポイントはありますか?
【A】
よいコミュニケーションをとるためには、環境を整えることが大切です。コミュニケーションに必要な環境には、聴覚的環境、視覚的環境、嗅覚・触覚的環境、空間的環境があります。
聴覚的環境とは、静かに話せる状態を作ることです。利用者の生活環境を振り返ってみましょう。誰も見ていないのに食堂のテレビがつけっぱなしになっている、レクリエーションをしているのに大きめのBGMが流れていて司会者の声が聞きとりにくい、利用者同士が話している隣で職員がいすをガチャガチャ移動させている、空き缶ボーリングをしている横で掃除機をかけている…こんな風景を見かけませんか?
私たちは聴覚的環境について配慮していないものです。もちろん、常にしーんと静まりかえっていては活気も出ないので、適度な喧騒が必要な時もありますが、今この音は必要か、コミュニケーションの邪魔になっていないかということに、もう少し注意を向ける必要がありそうです。
視覚的環境とは、場所の明るさや床・壁・家具の色調などを指します。明るさについては、相手の顔が見える程度の明るさが必要です。コミュニケーションは言葉だけでなく、身振りや表情で行うものでもあります。暗い場所でコミュニケーションをとっても、せっかくの笑顔の効果が半減します。一方、明るすぎても目に負担がかかります。晴れた日にレースのカーテン越しに窓から入る日差しが、高齢者にとって適度な明るさといわれます。
嗅覚的環境とは、不快な香りがないことです。不快なにおいが漂っている場所では、落ち着いて話ができません。触覚的環境とは、手触りが不快でないことです。テーブルやいす、クッションがザラザラ、ベタベタしていたり、尖っていては、穏やかに話せません。
空間的環境とは、なじんだ空間や懐かしい品物に囲まれて落ち着いた場所かどうかということです。居心地のよい場所では、人は自然とリラックスしたコミュニケーションがとれるものです。加えて、トイレとの距離も大切です。近くにトイレがあると、多くの高齢者は安心します。
出典:飯干紀代子『認知症の人とのコミュニケーション 感情と行動を理解するためのアプローチ』中央法規出版、2011年