コミュニケーションの4つの目的
【Q】
人とのコミュニケーションにはどの目的がありますか?
【A】
コミュニケーションには4つの目的があり、大きく2つに分かれます。1つ目は、相手の考えや気持ちを「理解する」ことです。「理解する」ためには、『相手の言葉を耳で聞いて理解する』場合と、『相手の書いた文字を目で読んで理解する』場合があります。専門的にはそれぞれ、聴覚的理解と視覚的理解といいます。
2つ目は、自分の考えや気持ちを「伝える」ことです。「伝える」ためには、『自分の考えや気持ちを口に出して喋って伝える』場合と、『自分の考えや気持ちを文字に書いて伝える』場合があります。専門的にはそれぞれ、発話と書字といいます。
人は、これら4つのポイントをうまく組み合わせて、コミュニケーションをとっています。通常は意識することなく、そのときどきに応じて、必要な能力を使い分けていますが、脳の病気やけが、認知症などによって、これら4つのポイントがうまく働かなくなる場合があります。コミュニケーションでは身振り、うなずき、視線によるアイコンタクト、表情なども大きな役割を果たしますが、これらについては、別の項でお話しします。
聞いて理解する能力が低下しているのか、それとも文字を読んで理解する能力が低下しているのか、まずは「できないこと」をきちんと把握する必要があります。一方で、保たれている能力(残存能力)は何かを探すことも重要です。「話すことはできないけれど、仮名なら書ける」などです。
コミュニケーションの4つのポイントを押さえることは、介護の現場で利用者とのコミュニケーションを成立させるためにとても大切です。
出典:飯干紀代子『認知症の人とのコミュニケーション 感情と行動を理解するためのアプローチ』中央法規出版、2011年