ケア会議の記録のコツは?
【Q】
ケア会議では情報が数多く飛び交います。会議の進行中に参加者が情報を共有できるような記録のコツがあれば教えてください。
【A】
口頭によるやりとりが主となるケア会議では、会議の進捗につれて明らかになる新しい情報を固定し、参加者全員で共有するためにも記録の技術が重要となります。膨大な情報を参加者の記憶に残し、より効率的にケア会議を進めるには、ホワイトボードを使って情報を視覚化するとよいでしょう。ホワイトボード上に並ぶ情報を眺めていると、新たなアイデアが思い浮かぶことも多く、発想を促すツールとしても有効です。
ホワイトボードはできれば2~3台用意したいところです。参加者全員がホワイトボードを取り囲める位置に置きます。壁に固定されたものよりも、自由に移動できるもの、片面のものよりも両面使用できるものがよいでしょう。
ケア会議で発信された情報は、一つひとつホワイトボードに書き込み、情報を蓄積します。その際、無秩序に羅列するのではなく、類似する情報を束ねてカテゴリー化すると、情報をうまく整理することができます。主なカテゴリーは、1.基本情報、2.生活歴、3.家族構成、4.希望、5.住まい、6.使用しているサービス、7.生活サイクル、8.能力評価、9.支援の前後比較などが考えられます。出てきた情報をそれぞれの場所にマッピングしていくと、効率的に「事例の全体像」を浮かび上がらせることができます。
また、ケア会議の「成果」である支援計画についても、「急ぐもの・急がないもの」「まわりが調整等をはかるもの・本人が主体的に動くもの」の2つの軸を垂直に交差させた「十文字表」などを使えば、支援のイメージや役割分担を共有しやすくなります。
なお、ホワイトボード1枚をA4判1ページ(横置き)にした専用書式を作ると、情報の集約・整理の技術を磨いていくことができます。人数に余裕のあるケア会議では、板書役と記録係をそれぞれ配置して同時進行で進めれば、ケア会議終了と同時にケア計画が完成します。ケア会議が開催された会場にコピー機があれば、その場で本人や家族あるいは関係者に配布することができます。
どこの会議室にもあるホワイトボードは、ケア会議の技術を高め、実践知を集約するツールとしてかなり有効な道具になります。
出典:野中猛・高室成幸・上原久著『ケア会議の技術』中央法規出版、2007年