ケア会議の具体的な展開のしかたは?(3)
【Q】
よりよいケア会議としていくためには、どのように展開すればよいのでしょうか。コツのようなものがあれば教えてください。
【A】
ケア会議では、一般的に次の5つのプロセスを踏みます。それぞれの所要時間の目安をあわせて示します。
(1)事例の概要把握(5~10分)
(2)事例の全体像把握(60~70分)
(3)アセスメント(5~10分)
(4)支援目標の設定(15~20分)
(5)支援計画の策定(5~10分)
このうち、「(1)事例の概要把握」については7月7日に、「(2)事例の全体像把握」については7月8日にご説明しましたので、今回と次回では(3)以降のプロセスについて説明していきます。
(3)アセスメント
事例の概要と全体像のやりとりがひと段落し、参加者のなかで利用者像が共有された時点で、アセスメントをまとめます。
かかわりの初期の段階の会議であれば、生活歴や既往歴、家族構成、家族関係などを背景としたニーズの所在についてチーム内の共通理解をはかることが主目的となるでしょう。
支援が進んでいる段階の会議であれば、会議の開催目的(事例の提出理由)となっている事項の背景や構成要素などについての共通理解を確認します。
「(2)事例の全体像把握」で出てきた情報を集約し、参加者の間で改めて「利用者像」を確認・共有することに注力することが大切です。それほど時間をかけずに、ここまでの間に出てきた情報をつなげてストーリーを描くようにまとめていくとよいでしょう。
【参考例】「Tさんは高校卒業後、一生懸命仕事をして独立し、厳しい競争を勝ち抜いて5階建てのビルを構えるまでに会社を大きくしました。これだけでも、たいしたことです。単なる気むずかし屋やひねくれ屋にできることではありません。プライベートではラジコンを作り、バイクに乗り、毎晩のように酒を楽しむ。残念ながら最初の家庭生活はうまくいかなかったけれど、その後も内縁の妻を得ています。非常にエネルギッシュな、自信に満ちた人物像が浮かんできますよね。そういう、まだまだこれからという壮年の男性が、突然倒れて片麻痺になり、言語機能も損なってしまった。これはちょっとやそっとの落胆ではありません。70歳や80歳の人の脳出血とは話が違います。こういうTさんの全体像を頭に入れた上で、これからどうやってかかわっていけばよいか、プランニングを考えていきましょう」
出典:野中猛・高室成幸・上原久著『ケア会議の技術』中央法規出版、2007年