通所者からの質問
【Q】
デイケアの通所者にプライベートなことを聞かれました…。
【A】
デイケアではテーブルを囲んで雑談したり一緒に料理をつくったりスポーツしたりと、日常生活に使い設定で1日何時間も通所者と過ごします。そうしたゆるやかな治療構造のなかでは通所者にとってスタッフは職員であると同時に身近な話し相手でもあるため、話題がスタッフ個人のことに及ぶことも多いでしょう。
例えば、「どんな音楽が好きですか?」とか「昨日のプロ野球中継見た?」など聞かれることはよくあることですが、こうした質問はスタッフの趣味や生活にかかわる事柄、つまりプライベートなことに関係しています。こうした何気ない会話の中で質問に答えることで、スタッフはすでに個人的な事柄を開示していることになります。ただ、こうした会話で「プライベートなことを聞かれた」とはあまり感じないでしょうし、スタッフは個々の完成で自然に応答していて、それで問題になることもあまりないでしょう。
スタッフが通所者から「プライベートなことを聞かれた」と感じて戸惑ったりするのは、答えたくないようなことを聞かれたときや、スタッフと通所者の間の境界がおびやかされるような事態だと思われます。
答えたくないことを聞かれた場合は、なぜそれに答えたくないのかはさておき、自分が答えたくないことには無理には答えないことです。自分のプライベートなことをどこまでオープンにするかは、日常場面でも無意識のうちに相手や場所によって変えているものです。通所者に聞かれた場合も言いたくないことを無理に言う必要はないでしょう。
通所者との境界をおびやかすような事態ですが、これは、例えば「電話番号を教えて」と言われるなど、質問の内容がスタッフに対して個人的な関係を求めていると感じられるような場合です。スタッフは、個人的な関係でなければ言わないような情報をむやみに通所者に開示することは慎重になることが必要です。
出典:日本デイケア学会編『精神科デイケアQ&A』中央法規出版、2005.