通所者の自殺
【Q】
デイケアの通所者が自殺をしてしまいました…。
【A】
精神科デイケアの仕事をしていて、通所者が自殺をしてしまうことほど辛いことはありません。まずは、スタッフも1人の人間として突然の死によって起こる辛い感情、悲しい感情、やるせない感情、無力感などが自分の心になることに気づくことが大切です。
スタッフだから平然でいようとするあまり、自分の感情を否認し続けるとバーンアウトにつながる危険性があります。そこで自分の感情(Feeling)を感じ、「今、ここで(Here and now)の自分がどうあるのか」ということに注意を傾けることです。その次にスタッフで話し合いをもつことが大切です。話し合いは今皆が突然の通所者の死をどのように受け止めたらいいのかを教えてくれるはずです。
スタッフでまずその通所者の家族への対応について話し合います。通所者がそれぞれのように家族もそれぞれです。一様な対応は家族の気持ちを逆なでしてしまうかもしれません。家族から通所者が自殺されたことを聞き、そのままにしておいてあげたほうがよい場合もありますし、あるいはデイケアの来室を促し、家族の気持ちを受け止めてあげることが必要な場合もあります。こうして自殺を通所者を抱えた家族がどのようなサポートが必要なのかを見極めます。
同時に、他の通所者に自殺した通所者のことを伝えるかどうかです。現実には、携帯やメールなどの普及も含めて地域に密着した精神科診療所のデイケアであれば、スタッフだけにとどめることはもはや難しいでしょう。ただそれでもデイケアの現場にいれば、突然の自殺を受け止められないと思われる通所者やその人とはほとんど交流のなかった通所者が思い浮かび、それを通所者全員と分かちあうことに躊躇が生まれます。それは「援助者の倫理的なジレンマ(Ethical Dilemma)」と呼ばれるものから生まれます。
スタッフは、こうしたジレンマに気づきながら、現在の通所者との関係を踏まえて話し合いをしていくことが大切です。
出典:日本デイケア学会編『精神科デイケアQ&A』中央法規出版、2005.