ケア会議の具体的な展開のしかたは?(2)
【Q】
よりよいケア会議としていくためには、どのように展開すればよいのでしょうか。コツのようなものがあれば教えてください。
【A】
前回に続いて、ケア会議の各プロセスのポイントについて説明します。
(2)事例の全体像把握
この過程は、ケア会議全体のなかでもっとも時間をかけるプロセスです(60~70分)。事例の全体像を把握するためには、「具体的な情報提供」→「質問と答え」の手順を踏むとよいでしょう。
1.具体的な情報提供
具体的な情報とは、過去の事実や最近の出来事を指します。基本情報、生活歴、家族構成、本人や家族の希望、住まい(住環境)、使用しているサービス、生活サイクル、能力評価(ADLやIADL)、支援の前後比較などのカテゴリーに整理することができます。
最初に基本情報を提示し、次いで生活歴を時系列に沿って具体的に情報提供します。必要に応じて家族構成、住まい(住環境)、使用しているサービス、生活サイクルなどの情報に飛ぶこともありますが、基本的には生活歴を基軸とします。時間軸を中心に話を進めることは「聞き手に優しい話し方」でもあります。事例概要の説明部分と同じように、ここではあまりに詳細な情報は提供しないほうがいいでしょう。
2.「質問と答え」の循環
ある程度の情報が参加者の頭の中に蓄積されると、参加者は「疑問点」や「知りたい情報」のリストを頭の中で作り始めます。これが「質問」になります。
全体の50~60%程度まで情報提供が済んだら、質問を受ける姿勢に入るのがコツです。受けた質問に答えながら情報提供していけば、参加者が知りたい情報を提供することができます。時間の制約があるなかでは、もっとも効率的な方法といえます。
なお、ケア会議の成果を上げるためには、「質問と答え」は具体的であることが望まれます。「どんな感じですか?」「どうなんでしょう?」「利用者はどうしたいんでしょう?」「どのくらいですか?」といった抽象的な質問は禁物です。こういった質問に対しては、事例提出者の答えも抽象的になり、時間をかけて「思い」を語るわりには質問から得られる収穫が少なくなります。5W1H(いつ・どこで・だれが・なにを・どうして・どのように)をハッキリさせ、頻度や時間、量などができるだけ数量化・具体化された情報をやりとりするようにしましょう。
「質問と答え」は、循環すればするほど効果が上がります。また、一問一答でテンポよい循環を作り出せると会議にもリズムが出て、参加者は気持ちよく議論を進めることができます。
出典:野中猛・高室成幸・上原久著『ケア会議の技術』中央法規出版、2007年