ケア会議の具体的な展開のしかたは?(1)
【Q】
よりよいケア会議としていくためには、どのように展開すればよいのでしょうか。コツのようなものがあれば教えてください。
【A】
ケア会議では、一般的に次の5つのプロセスを踏みます。それぞれの所要時間の目安をあわせて示します。
(1)事例の概要把握(5~10分)
(2)事例の全体像把握(60~70分)
(3)アセスメント(5~10分)
(4)支援目標の設定(15~20分)
(5)支援計画の策定(5~10分)
今回から数回に分けて、各プロセスのポイントについて説明していきます。
(1)事例の概要把握
事例の概要説明は、10分程度の時間でコンパクトに行うことが重要です。最初に事例の提出理由を述べ、事例の簡単なプロフィールを加えると提出理由が伝わりやすくなります。事例の生活課題や問題の状況によっても異なりますが、病名(障害名)、年齢、性別、障害の状態、家族状態、簡単な支援経過など、空で聞いていて事例の様子をうっすらと思い浮かべられる程度が望ましいでしょう。資料に書かれたことを「読む」のではなく、事例提出者の頭の中にある事例イメージを「伝える」のがコツです。アセスメント終了時における全体の情報量を100とした場合、この段階の情報量は10%程度でよいでしょう。
事例の概要説明の参考例を挙げます。
【参考例-1】「統合失調症の45歳の男性の方です。長期入院により社会生活技能の低下があります。医療的には退院可能となりましたが、遠方に住む家族の協力が得られていません。本人の希望によりアパート暮らしを目的に支援を開始しましたが、思わしい成果を上げることができませんでした。これまでの支援の振り返りと、今後の方向性を見出すことを目的に事例を提出することにしました」
【参考例-2】「5年前に妻を亡くした83歳の男性です。妻を亡くした悲嘆を「愛犬の世話」で乗り越えたようですが、昨年の10月に腰痛を訴え入院しました。2週間の入院加療により症状が改善したため、退院とともにホームヘルプを導入しました。しばらくは調子よく推移したのですが、3カ月前より意欲減退、食欲低下、腰痛がみとめられました。入院を勧めましたが「このまま家で死にたい……」と入院を拒否。主治医の往診が開始されましたが、「治療しても痛みが治まらない」という訴えが続いています。今後どのようにかかわればよいのか、現在の支援関係を再検討するとともに今後の支援の方向性を探りたいので事例を提出しました」
出典:野中猛・高室成幸・上原久著『ケア会議の技術』中央法規出版、2007年