脱水とせん妄
2011年07月13日 09:40
【Q】
高齢者が脱水になると、せん妄を起こしやすいと聞きましたが、本当ですか。
【A】
せん妄が起こる原因には、感染症・脱水・便秘・薬剤(多剤併用)が挙げられます。つまり脱水は、せん妄を起こすもっとも大きな原因の1つなのです。
せん妄は「活動性が不適切に上がってしまう〝せん妄〟」と「活動性が下がってしまう〝せん妄〟」の大きく二つに分けられます。前者は入院対応時に苦慮することがたびたびなのですが、実は後者もなかなか見分けられず、急速に生命の危険にさらされてしまうことがあります。どちらのタイプのせん妄も、致死率が高いことが知られています。
原因がどうであれ、いったんせん妄が始まってしまえば飲水行動が制限され、どんどん脱水が進んでしまい、ますますせん妄による意識障害が悪化し、どうにも手がつけられなくなるということになります。
入院や施設入所の場面で、せん妄のためベッドの上に立ち上がったり、点滴を自己抜去したり、大声で叫んだりして入院や入所の継続が不可能になってしまうことも、皆さんは一度ならず経験されていることでしょう。その結果、家族や看護・介護スタッフの肉体的・心理的・経済的な負担は大きなものになってしまいます。さらに身体拘束など、患者の尊厳も侵されてしまうことも少なくないと思われます。
出典:「知っておきたい脱水症の予防と対策」『おはよう21』2011年8月号、中央法規出版