脱水の原因
【Q】
高齢者が脱水になりやすい原因とは何ですか?
【A】
脱水は成人に比較して高齢者に起こりやすいことが知られています。その理由としては、次のようなことが挙げられます。
1.加齢に伴う体液量の減少
ヒトの体液量(体内水分量)は、1歳未満の乳児では体重の約70%ですが、その後、徐々に減少し、成人では体重の約60%となります。そして加齢によりさらに減少し、70歳以上の方では約50%となります。つまり、高齢者になると体液量が少なくなるのです。その結果、体内の備蓄水分量が滅少し、脱水を起こしやすくなります。
2.代謝水の産生低下
健康成人で1日に約300ミリリットル産生されている代謝水(体内で、脂肪や糖質などの栄養素が燃焼することで発生する水分で、燃焼水ともいいます)が加齢とともに減ってくることも、高齢者に脱水を起こしやすくします。
3.水分摂取量の減少
食欲低下を起こす持病がある方、頻尿や尿失禁を恐れて水分摂取を控えている方、脳の中にある渇きを感知するセンサーの働きが低下して、口渇を感じにくい方なども、適切な水分補給ができず、脱水を起こしやすくなります。
4.加齢に伴う腎臓の働きの低下
腎臓は、血液の中の老廃物を水分とともに尿として排出させる浄化装置のような働きをしていますが、身体の水分が不足してくると、節約のために尿の水分量を減らすことができます。この機能のことを尿濃縮力といいますが、加齢とともに尿濃縮力が低下するため、水分不足の時にも十分な節約ができないため、水分の相対的排泄過多となります。このことも脱水を起こしやすくします。
5.水分喪失過多
高齢者は発熱したり、汗をかいたり、ウイルス性胃腸炎にかかって下痢・嘔吐を起こしたりして、水分の喪失量が多くなりがちなことも、脱水を起こしやすい原因です。
6.薬剤による水分摂取意欲の減退
さまざまな持病に対して、いろいろな薬剤を服用している高齢者は少なくありません。薬剤の中には、食欲を減退させるものもあります。その結果、水分の摂取量も減ってしまいます。また心臓や腎臓の持病に対して、尿の出を良くする利尿剤を服用している方もいます。そのような方は水分の喪失量が多くなりがちです。
出典:「知っておきたい脱水症の予防と対策」『おはよう21』2011年8月号、中央法規出版