正常な排尿とは?
【Q】
利用者から排泄に関する悩みを受けることがありますが、うまく答えることができません。そもそもの話として、正常な排尿の定義について教えてください。
【A】
男性と女性では排尿器官の構造が異なるため、起こりやすい障害や悩みも異なります。一般的には、正常な排尿の状態として次の要件が挙げられます。
・ある程度の我慢が可能で、300ml以上ためることができる
・トイレに行ってすぐに出る
・腹圧をかけなくても尿に勢いがある
・短時間で終わる、ダラダラとしない
・痛みがない
・残尿がない
・漏れがない
排尿機能の基本は、蓄尿(尿を貯める)と排尿(尿を出す)です。これらの機能は、膀胱と尿道括約筋がタイミングよく協力して働くことで行われます。
蓄尿時には、膀胱が緩んだ状態で尿にたまっていきます。この時、括約筋の働きで尿道は閉まっています。たまる尿が150~200mlになると尿意を感じますが、自分が尿を出そうとしない限り、膀胱の壁は緩んだまま尿をため続けます。
排尿時には膀胱の平滑筋に力が入り、膀胱は収縮します。同時に尿道括約筋が緩むため、膀胱のポンプ作用で尿は尿道から外へ排出されます。
蓄尿と排尿の働きは、神経により調節されています。膀胱や尿道、括約筋などの働きは主に、自律神経とそれを管理する大脳によって行われます。自律神経は脊髄を通って末梢神経へつながり、各臓器に向かいます。
尿がたまって膀胱の壁が伸展すると、神経がその情報を脳に伝え、脳は尿意として感じます。自律神経のうち副交感神経は、排尿するときに脳からの指令を下部尿路(膀胱、尿道、括約筋)に伝え、膀胱の壁を収縮させ、括約筋を緩めて尿道を開きます。
自律神経のうち交感神経は、蓄尿時に無意識に尿道を閉じるように働いています。そのほか体性神経は、尿を我慢しようと思ったときに外尿道括約筋に力を入れる働きがあります。
これらの神経は大脳によってコントロールされます。つまり、尿を我慢したり、トイレで準備を整え排尿するなどの意思が神経に伝わり、膀胱や尿道まで届い、排尿のための適切な協調運動が行われるのです。
出典:浜田きよ子編『自立を促す排泄ケア・排泄用具活用術』中央法規出版、2010年