尿失禁とは? その種類
【Q】
担当する利用者のなかに、まれに失禁される人がいます。本人は恥ずかしがって病院に行こうともしませんが、尿失禁にもいくつかの種類があると聞きます。その方の失禁のタイプがわかれば、アドバイスができるかもしれません。
【A】
尿失禁とは、自分の意思に関係なく尿が漏れてしまい、衛生上、社会生活上問題がある状態を指します。自分がなった場合を想像するとわかりますが、尿失禁をともなう生活は不便で精神的負担もあり、QOLを下げる大きな原因となります。尿失禁は次のように分類されます。
・腹圧性尿失禁
重いものを持ち上げたり、くしゃみをするなど、腹圧が急激に上昇する際に尿が漏れる状態です。特に中年以後の女性に頻度が高く、尿道括約筋が衰えたり、骨盤底の筋力(骨盤底筋群)が落ちて膀胱や子宮、直腸などの固定が不安定になった結果、尿道の締まりが弱くなることが原因です。出産、便秘、肥満などで悪化します。弱くなった筋肉を鍛える骨盤底筋体操や薬物療法、手術などが採られます。
・切迫性尿失禁
蓄尿時に排尿の意思がないにもかかわらず、強い尿意とともに膀胱が勝手に収縮し、我慢できずに漏れることです。過活動膀胱で漏れるともいえますが、切迫性尿失禁という場合は、腫瘍や結石などほかの原因に対しても使われます。症状に対しては、過活動膀胱と同様に薬物治療が採られます。
・溢流性尿失禁
膀胱に大量の残尿が残っているときに、さらに腎臓からつくられた尿が膀胱の中に流れこんでくると、それ以上ためられない尿が尿道からじわじわと漏れ出てくる状態です。注意しなければならないのは、「尿が十分出せない」のが原因だということです。放っておくと腎機能異常や感染、結石を誘発するため、尿を十分出しきれるようにしっかりとした治療やケアが必要です。
出典:浜田きよ子編『自立を促す排泄ケア・排泄用具活用術』中央法規出版、2010年