記録における省略と専門用語
【Q】
記録では用語を省略したり専門用語で書くことが多いですが、これは正しいのでしょうか。また、記録で注意すべきことは何ですか?
【A】
記録を書く際に注意したいのは、言葉を省略せず、造語や専門用語なども極力使わず、日常生活のなかで使用する言葉で表現することです。記録は入居者本人(家族)のものであり、記録の基本は誰が見てもわかる言葉で記載することです。
たとえば、体位交換を「体交」と省略したり、重複することを「ダブり」と造語で表したり、医療的な専門用語をそのままに何の説明もなく書き記すことはありませんか。お茶を飲むことを「水分補給」、食事を全部食べると「全量摂取」など、日常の暮らしでは使わない言葉で表現していませんか。
記録では、事実をそのまま書き、憶測や推測ではない客観的な視点で書くことがとても大切ですが、これが実はなかなか厄介です。
たとえば、職員Aさんが入居者Bさんの居室を訪問した際、Bさんがベッドの下に横になっていた状態を発見したとしましょう。Aさんは、記録に「ベッド下に転倒していたのを発見した」と記すケースです。
この記録は客観的な視点で書かれているでしょうか。この場合、Aさんが行ったときには、Bさんはすでにベッドの下にいたので、実際に転倒したのかどうかはわかりません。目の前で転倒する様子を見たのであれば、事実としてその様子を記載する必要がありますが、この場合は違います。
見ていないのであれば、見たままの状況や入居者の表情、言葉をそのまま書き残すことが客観的な記載の方法といえます。
現場で必要な記録の優先順位は「事実」です。そこに推定が混在すると、適切な分析や判断の妨げになることは間違いありません。
出典:秋葉都子編著『ユニットケアで暮らしをつくる』中央法規出版、2011年