正常圧水頭症
2011年02月24日 09:30
【Q】
認知症のなかには、治療可能なものがあると聞きました。
【A】
正常圧水頭症(NPH:Normal Pressure Hydrocephalus)は、歩行障害と認知障害、排尿障害(失禁)という3つの症状が特徴的で、適切な対応によって症状の改善がみられる治療可能な認知症の代表です。
3つの症状のうち一番先に起こるのが歩行障害で、ほとんどの患者にみられます。足が思うように前に出ず、すり足になったり小刻みになったり、ふらついたりするので、パーキンソン病と診断されることがあります。しかし、内股になるパーキンソン病に対し、正常圧水頭症は足を外側に開く歩き方をします。
歩行障害に加えて、物事に意欲がなくなりボーッとしていたり、集中力がなくなります。また急に尿意をもよおし、我慢できずにその場で失禁することもあります。
人間の脳は、脳室で作られる髄液に浮かんでいる状態を保つことで衝撃から守られています。髄液は脳、脊髄の表面を通って静脈に吸収されるという循環を繰り返していますが、何らかの理由でこの循環が滞ると髄液がたまって脳室が拡大し脳全体を圧迫して、これらの症状を起こします。治療の基本は髄液の流れを整えるシャント手術ですが、これは比較的容易な手術で、患者にも負担の少ないものです。
出典:長谷川和夫『わかりやすい 認知症の医学知識』中央法規、2011年