高齢者の筋力を鍛える体操 その1
【Q】
要介護高齢者がトイレに座って排泄するだけの筋力を維持、または鍛えるための体操について教えてください。
【A】
意識がない場合や絶対に安静を保たなければならない以外、座位または立位姿勢で排泄できるように援助することが介護の仕事です。座位姿勢であれば、重力や腹圧を最大限に活かすことができ、気持ちよく楽に排泄できるうえに、残尿や残便の心配が少なくなります。
座位姿勢で排泄するためには、
・排泄しやすい姿勢を保つ「姿勢保持」
・排泄中や後始末の間に便器に座っていられる「座位の安定性」「耐久性」
が必要になります。そしてズボンや下着の脱着、座り直し、さらには移乗動作の際に上体を前に傾けたり、便器からお尻を浮かせたり、わずかな時間でも立つことができれば、介助を受ける側、介助をする側双方にとって楽になります。そのためには、重心移動や間接の柔軟性、筋力といった身体機能が必要です。
体操の目的
座り直しや移乗動作には、バランス感覚と重心移動が欠かせません。そのためには、上体を傾けても倒れない筋力(背筋群、腹筋群、臀筋群、大腿四頭筋、ハムストリングス)と関節(脊柱(体幹)、股関節、膝関節、足関節)の柔軟性が必要となります。
お尻を浮かせたり立ち上がる動作には、より確実な重心移動と、体重を支えるための下肢全体の筋力が必要になります。特に膝折れを予防するためには、大腿四頭筋の維持・強化が必要です。また立ち上がり動作には、下肢および体幹の伸展活動が必要になります。体幹を伸展するためには脊柱起立筋や腰方形筋、股関節の伸展には大臀筋、膝関節の伸展には大腿四頭筋が作用します。
実際には、手すりや台を使って体幹を支えることになるので、手や前腕部で体重を支えるために、上肢の筋力(三角筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、大胸筋、前腕筋群)も必要になります。また、関節の柔軟性も大切です。
出典:上野文規+下山名月監『介護を変えるDVDブック 新しい排泄介護の技術』中央法規出版、2009年