前頭側頭型認知症とは
【Q】
前頭側頭型認知症とはどのような病気ですか?
【A】
前頭側頭型認知症は、初老期に発症する代表的な認知症の疾患です。ピック病ともいわれています。アルツハイマー型認知症のように脳の全体が徐々に萎縮していくのとは違って、前頭葉と側頭葉に限局して萎縮していく病気です。実態はよくわかっていません。アルツハイマー型認知症の患者数の10分の1程度といわれていますが、正確な罹患率は知られていません。
症状に特徴があります。初期には記憶低下や生活の障害は軽く、この時点では認知症とみなされないことが多くあります。その一方で、人格の変化がみられます。人が変わったような奇妙な行動を繰り返します。万引きをするとか、平気で破廉恥な行動をすることがあります。誰彼かまわず性的な行為におよぶようなこともあります。物事に無頓着でだらしなくなり、無精な生活を続けたりします。人から注意されたり叱られたりしても耳を傾けることが少なく、自分勝手でわが道を行くといった行動になります。深く物事を考えず、悩んだりする様子もありません。その他、決まりごとにこだわることも特徴的です(決まった道しか通らない、決まった物しか食べないなど)。あまりにも異常な行動が続く時期は、一時的に精神科医療施設に入院して、対症療法的な治療が必要な場合があります。
病気が進行すると、言葉の意味がわからなくなったり、たとえばカレーライスとか味噌汁といった名詞さえも理解できなくなります。動作についての記憶は保たれ、失見当もないので、電車やバスなどに乗ることができ、迷子になるようなこともありません。何年にもわたってこうした症状が続きますが、やがて認知症が進行し、無言、無動、そして寝たきりになります。発病してから十数年以上の経過をたどります。
出典:長谷川和夫『認知症の知りたいことガイドブック』中央法規出版、2006年