利用者とよい関係を築く秘訣は?(1)
【Q】
利用者とスムーズによい関係を結ぶためには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか?
【A】
利用者と好ましい援助関係を築くためには、ケアマネジャーがどのような態度で利用者に接するかが重要になります。この点に関して、アメリカの社会福祉学者F.P.バイステックが明らかにした7つの原則が大変参考になります。ご質問に答える意味で、その7原則を2回に分けて紹介します。
1.利用者を個人としてとらえる
利用者は十把一絡げにして「利用者」として扱ってもらいたくないと考えています。誰でも「○歳代の女性(男性)は――」などと言われれば、「自分は違う」と反感を覚えることがあるでしょう。似たような年齢や病歴であったとしても、人それぞれです。出会った時点だけでなく、それまでの長い人生を歩んできた一人の人として理解することが必要です。
2.利用者の自己決定を促し尊重する
自己決定とは、自分が何を決めるのかを理解し、それに関する情報を収集して、それぞれの選択結果に起こりうるプラスとマイナスの影響を評価した後、自分の価値観をベースに選択・決定することです。「何を食べるのか」「何を着るのか」など、私たちの生活は、日々自己決定の連続です。たとえ要介護状態であっても、可能な限り利用者自身が自己決定できるように、利用者のストレングス(強さ・能力・潜在的な力)に着目し、必要に応じて援助する必要があります。
3.受けとめる
誰だって自分を「価値ある人間」として認めてほしいものです。ケアマネジャーは、高齢であることや援助が必要という視点で相手を見るのではなく、利用者の長所も短所もあるがままに受け入れ、理解する必要があります(ただし、社会規範に反するような行動まで正当化するものではありません)。
出典:高良麻子著『ケアマネジャー実践力向上ワークブック 基礎編』中央法規出版、2008年