精神科デイケアの機能と役割
【Q】
デイケアの機能と役割とはどういうものでしょう?
【A】
デイケアの果たし得る機能、役割は極めて多様、複雑であり、その設置母体、通所者の年齢、疾病構成、病状等によって、期待される機能・役割が変わってくることはいうまでもありません。
また、同一のデイケアでもその時々の状況、利用者のニーズにより、どのような機能を重視するかを絶えず柔軟に変化させていくことが求められます。
医療機関で診療報酬を得て行われるデイケアが、まず「治療の場」であることを要請されるのは当然のことですが、実際のデイケアでは、個々の通所者のニーズ、病状に応じて、「治療の場としての機能」「社会復帰を目指すリハビリテーションの場としての機能」「居場所としての機能」をあわせもっていることが求められます。
デイケアでは、通所者にまず「安心していられる場」を提供し、「いてもいい場」であることを保証した上で、まだ病状が不安定な通所者に対しては、医療的なサポートを主とした働きかけを行い、病状が安定してからは就労支援も含めたリハビリテーションプログラムを主体とした働きかけを行うなど、これらの機能は、互いに重なりあって個々の利用者の自立を援助する役割を果たしています。
また、特に病院デイケアにおいては、現在もなお入院中である長期在院者に対して、デイケアの存在がさまざまなインパクトを与え得るだけでなく、数の上では圧倒的多数を占める病棟スタッフの関心が、デイケアを通じて自然と外来、地域に向くようになります。そして、このような変化を通じて、病院全体の治療構造を、より開かれたものに変えていく可能性を持っていることも、デイケアのもつ大切な機能の1つであるといえます。
出典:日本デイケア学会編『精神科デイケアQ&A』中央法規出版、2005.