認知症は遺伝する?
【Q】
アルツハイマー型認知症は遺伝すると聞いたことがありますが、本当ですか?
【A】
アルツハイマー型認知症は遺伝病ではありません。確かに、アルツハイマー型認知症の中には非常にまれですが、遺伝性のものがあります。家族性アルツハイマー型認知症といわれるものです。その家系では、両親のどちらか一方がアルツハイマー型認知症の場合、その子は約50%、つまり2人に1人がアルツハイマー型認知症になるといわれています。ただし、一卵性双生児でさえも、2人ともアルツハイマー型認知症になるとはかぎりません。
遺伝形式ははっきりしていて、現在までに14番、21番および1番の遺伝子の異常が発見されています。しかし、通常のアルツハイマー型認知症は、孤発性アルツハイマー型認知症といわれるように、はっきりした遺伝を示しません。
アルツハイマー型認知症の病態は、高齢になるとベータたんぱくとよばれる異常なたんぱく質が脳内にたまってくることから始まります。これがさらにアミロイドという塊になって、神経細胞のネットワークを破壊します。通常、ベータたんぱくは酵素の働きで分解されますが、アミロイドになると分解できなくなります。この塊を顕微鏡でのぞくとシミのように見えるので、老人斑とよばれています。老人斑ができる条件としてあげられるのは、高齢、過酸化物質が多いこと、リポたんぱくE4という型の血清であることなどです。これらは体質的なものが含まれていますので、その意味では遺伝的な要素はあります。
遺伝病と違っている点は、親から子へ確実に伝わるわけではないということです。環境や生活習慣、長生きなどのさまざまな要因が関係して発病につながるのです。その意味で、アルツハイマー型認知症は高血圧や動脈硬化症、あるいは糖尿病のような生活習慣病に近いと考えられます。
出典:長谷川和夫『認知症の知りたいことガイドブック』中央法規出版、2006年