ダイエットと摂食障害
2010年12月16日 09:30
【Q】
摂食障害にはダイエットが関係することが多いとのことですが、なぜ病気になってまでやってしまうのでしょうか?
【A】
最初は誰もが試みるダイエットですが、多くの人はほどほどに減量できればそれでよしとしますし、食欲のほうが勝ってダイエット計画を断念することになります。病気になるまでダイエットを続けてしまう人は、ほどほどで済ませる人と何が違うのでしょうか。
1つは、ダイエットに専念し続けることで、思春期に迎えるさまざまな葛藤や自立という課題から逃避できることがあります。将来どのように生きていくか、といったような深刻な問題に比べれば、食べることや体重の問題は些細なことです。そのような些細なことで手っ取り早く目標を持ち、達成できれば、また些細な悩みに没頭できれば、肝心な問題から遠ざかることができます。そもそも強迫的な食行動を維持できるということは、完全主義の傾向が強い人かもしれません。100%達成することに価値を置く、いわゆる「よい子」かもしれません。
次に、「審美観」の問題があります。摂食障害の人が望ましいとする体型、審美観の背景には、現代社会の審美観があります。思春期は、周りから自分がどのようにみられるかということや、容姿、流行に最も敏感な年頃で、社会の審美観に振りまわされやすいところがあります。摂食障害の人は、非常に非現実的な社会の審美観を、真に受けてしまう傾向があるということでしょう。そこには、「今の自分が好きだ(今の体型をよしとする)」という感覚の欠如、自尊心の欠如があります。
出典:松下年子・吉岡幸子・小倉邦子編『事例から学ぶ アディクション・ナーシング―依存症・虐待・摂食障害などがある人への看護ケア』中央法規出版、2009年