介護サービスの契約の無効
2010年12月02日 09:50
【Q】
利用者との介護サービスの契約が無効となる要件と、その場合どうなるのかについて教えてください。
【A】
次のような場合、契約は無効です。
(1)事業者の債務不履行や不法行為により、利用者が損害を被った場合に、損害賠償の一部または全部を免除するという条項。ただし、一部免除が無効とされるのは事業者、その代表者または従業員の故意または重大な過失による場合に限られます。一部免除とは、具体的には損害額の上限を決めて「金○○円を限度として賠償します」とするような場合をいいます。
(2)契約解除に伴う損害賠償の額を予定したり、違約金を定めた条項について、その額が平均的な損害の額を超える場合は、その超過部分。
(3)金銭支払いの滞納について損害賠償の額を予定したり、違約金を定めた条項について、残額に年14.6%の割合を乗じて計算した額を超える場合は、その超過額。
(4)民法、商法などの法律の任意規定の適用による場合よりも、消費者の権利を制限したり、義務を加重する条項で利用者の利益を一方的に害するもの。
取り消しの場合は、利用者から事業者に対して介護サービス契約を取り消すと通知(意思表示)しなければなりませんが、無効の場合は利用者から何もしなくても、該当の条項については契約の効力が生じません。
また、無効とされた場合は無責となるのではなく、不法行為など民法の関連条項が適用され、事業者に損害賠償義務が発生します。(4)の場合は、民法、商法その他の法律の任意規定に則った取り扱いがなされます。
出典:吉岡讓治『職員と利用者を守る 介護現場の法律講座』中央法規出版、2010年