高齢者虐待と嗜癖
2010年12月14日 10:00
【Q】
高齢者虐待も嗜癖の1つとしてとらえることがあるようですが、どのような点に注意してかかわっていけばよいのでしょうか?
【A】
家庭内の高齢者虐待ですが、精神障害や嗜癖問題を抱えた成人の子どもによる虐待が少なくありません。例えば、アルコール依存症の息子や、高齢な親の年金を生活費にして暮らす息子や娘です。ただし、児童虐待とは異なって高齢者虐待の場合は、それまでの被虐待者と虐待者の関係性があるので、問題は単純ではありません。
例えば、親から虐待されて育った息子が成人し、衰弱した高齢の親を虐待するパターンや、夫の女性関係でさんざん苦労した妻が、高齢で動けなくなった夫をネグレクトするというパターンもあります。必ずしも嗜癖という枠組みでとらえきれるケースばかりではありません。しかし、虐待者に虐待行為をやめたいという意志があるにもかかわらず虐待が続いていたり、虐待することで虐待者の万能感が満たされ、被虐待者との歪んだ関係性が固定化されているようであれば、アディクション(嗜癖)の枠組みでとらえて対応するのが望ましいでしょう。被虐待者に、暴力を受けていることを隠そうとするなどの共依存的な行動が認められればなおさらです。この場合は、虐待されている高齢者が認知症等の精神障害により事態を了解できず、そのために求助行動がとれないケースとの鑑別が大切になります。
出典:松下年子・吉岡幸子・小倉邦子編『事例から学ぶ アディクション・ナーシング―依存症・虐待・摂食障害などがある人への看護ケア』中央法規出版、2009年