救急外来でみられる嗜癖
【Q】
病院の救急外来でよくみられる嗜癖はどのようなものでしょうか? 具体的に教えてください。
【A】
救急外来には、自殺企図や自傷行為で訪れる人が少なくありません。その手段として用いられる過量服薬やリスト(アーム)カットは、一部の人にとって嗜癖行動となっています。また、アルコールによる急性中毒症状、アルコールや薬物による離脱症状を呈した患者も、救急外来でよく出会う嗜癖者です。過量服薬の場合は、その多くが向精神薬(溜め込んだ処方薬等)を一気に、大量に飲んで担ぎ込まれるというパターンですが(それに自傷行為が伴うことも多くあります)、時に、長期間服用し続けてきた薬の副作用で、突然意識混濁になり担ぎ込まれる場合もあります。
アルコールによる急性中毒症状については、特に問題視されたのが若者の一気飲みです。大学のサークル活動の飲み会などで、先輩から一気飲みを強いられた学生が命を落とすという事件までありました。急性アルコール中毒症は、アルコールによる血糖降下作用が急激に生じることによって引き起こされます(したがって、ブドウ糖の点滴で改善します)。なかには、一気飲みで担ぎ込まれたものの実はアルコール依存症でもあったというケースもあります。一般に、アルコールの血中濃度が0.1%までなら「ほろ酔い加減」、0.2~0.3%で「酩酊」、0.4%で「泥酔」、それ以上は「昏睡」となります。血中濃度が最高度に達するには通常30~60分かかりますが、大量のアルコールを一気に飲むと血中濃度が急激に上昇し、ほろ酔いも酩酊も飛び越して、最初から泥酔や昏睡状態に突入してしまうので、注意が必要です。
出典:松下年子・吉岡幸子・小倉邦子編『事例から学ぶ アディクション・ナーシング―依存症・虐待・摂食障害などがある人への看護ケア』中央法規出版、2009年