内科外来でみられる嗜癖―本人の嗜癖
【Q】
病院の内科外来でよくみられる嗜癖はどのようなものでしょうか? 嗜癖者本人の特徴などを教えてください。
【A】
内科外来はあらゆる疾患の窓口となっているため、身体に支障が生じた嗜癖者は、まず内科外来を受診することが多くあります。その時の身体的不調は、嗜癖のために生じたものもあれば、嗜癖には関係なくたまたま体調を崩したというケースもあるでしょう。もし嗜癖ゆえに身体を壊したというケースであれば、それは嗜癖がかなり進行した時点での受診ということになります。
嗜癖が身体的な自覚症状に発展するまでには、相応の時間がかかります。例えば、長期間にわたる大量飲酒と不摂生から低栄養状態や電解質のアンバランス、脱水症状をきたして受診することがあります。原因もわからず意識混濁した患者を家族が連れてきたが、ていねいに問診すると、実は朝から飲酒するようなパターンが1か月以上続いていたというようなケースです。そのようなパターンになった経緯を尋ねると、退職してやることがなくなってからだと話があったりします。
ほかに、アルコールや薬物への嗜癖が起こす代表的な病態像として、“離脱症状”があります。長期間にわたる物質摂取があった上で一定期間、その物質を摂取しなかったために生じる身体精神症状ですが、離脱症状もそれなりのステージに至らなければ生じ得ません。そして、離脱症状の多くは急性症状として出現するため、一般の内科外来よりもむしろ救急外来でみられることのほうが多いかもしれません。
以上のような例はあるものの、内科外来で遭遇する嗜癖者の多くは、嗜癖問題そのものでの受診というよりは、ほかに身体的問題があって受診したというケースです。例えば、高血圧症や糖尿病で内服中で、肝機能障害もあり医師から禁酒を指示されているにもかかわらず毎日5合の晩酌を続けているような外来患者です。アルコール依存症の診断を得ていなくても、嗜癖問題を抱えていることは明らかでしょう。
また、リウマチ疾患を抱えた患者が、リウマチ薬とは別に、長期にわたって漫然とベンソジアゼピンの処方を受けていたとします。難治性の疼痛性疾患で治療中の患者が、相当量のオピオイドを長期間使用していたとします。このような場合でも、医師や患者が気づいていなくとも、実は処方薬依存であったということもあります。
出典:松下年子・吉岡幸子・小倉邦子編『事例から学ぶ アディクション・ナーシング―依存症・虐待・摂食障害などがある人への看護ケア』中央法規出版、2009年