介護と火事
2010年10月07日 09:50
【Q】
寒い季節が訪れると、空気が乾燥し、火事への備えが必要ですが、その場合の法的責任はどのようになっているのですか?
【A】
在宅介護では、介護食の調理のために火気を使用する場合があります。最近では、自動消火装置がついた調理器具が一般ですから、家事のリスクはそれほど多くはありません。とはいえ、そのリスクを100%なくせるものではありません。調理以外でも、仏壇のろうそくや線香への点火など、火気を使用する機会は意外とあるものです。また、在宅酸素療法を行っている利用者の場合には、ライターの点火による引火の危険性がよく知られているところです。
例えば介護食の調理の際、うっかり火を消し忘れて火事になってしまったら、担当のヘルパーと事業者が法的責任を負うことになります。民事上は、火災保険に加入していれば保険金で処理することができますが、加入していないと自分たちで賠償しなければなりません。さらに問題なのは、火事を起こすと利用者や社会に対する信用の失墜が避けられないということです。最悪の場合、事業所閉鎖という事態になりかねません。
なお、「失火の責任に関する法律」によって、重大な過失がない場合は、延焼した部分についての責任は負わなくてよいことになっていますが、直接燃えた家屋についての責任は免れません。
事業所としては、ヘルパーに対する指導監督をしっかりと行い、研修等で火気の取り扱いについて教育する必要があります。
出典:吉岡讓治『職員と利用者を守る 介護現場の法律講座』中央法規出版、2010年