アルコール依存症の近年の動向
2010年09月24日 10:20
【Q】
最近、女性や高齢者でアルコール依存症となる人が多いように感じています。近年の状況について教えてください。
【A】
以前は、アルコール依存症者といえば圧倒的に中年男性が多かったのですが、近年は女性や若年、高齢の依存症者が増えています。そして、若い女性アルコール依存症者の多くは、摂食障害を併発しています。高齢になって発症するケースでは、退職するまでは晩酌レベルの飲酒で普通に働いていた人が、退職後時間を持て余して日中から飲酒するようになり、あっという間に依存症になってしまったというパターンが多いようです。
さらに、アルコール依存症の軽症化といえるのかもしれませんが、「隠れアル中」といわれる人たちが増えています。これは、アルコール依存症の基本症状はあるものの、いちおう仕事は続いており、家族崩壊にも至らず、それなりの社会適応が続いている人たちのことであり、底つき体験を免れている人のことをいいます。会社の健康診断で肝機能障害を指摘されるが(例えばγ‐GTPが3桁半ば)、自覚症状はなく、完全な断酒をすることなく過ごしている人です。仮に受診しても、入院する必要はなく外来通院で済んでいる人、セルフヘルプグループに通うこともなく、自分は生活習慣レベルの変更を求められている、といった認識しか持っていない人になります。
出典:松下年子・吉岡幸子・小倉邦子編『事例から学ぶ アディクション・ナーシング―依存症・虐待・摂食障害などがある人への看護ケア』中央法規出版、2009年