高齢者の生活リスク
2010年08月05日 10:00
【Q】
高齢者を支援する場合、どうしてもリスクが気にかかります。ただ安全ばかりを優先すると、利用者の生活の範囲が狭まってしまいます。どうバランスを考えればいいのでしょうか。
【A】
生活リスクとは、生活をしていくうえで誰にでもふりかかる可能性があるリスクで、普通の暮らしのなかに潜んでいます。具体的には、病気、けが、事故、災害、失業、犯罪などです。普通の生活では、交通事故にあわないために外出をしない人はいませんし、ケガを避けるためにスポーツをしない人もいないでしょう。
介護事故は医療事故と異なり、サービス提供者が直接行う介護行為から事故が起きるというよりも、普通の生活から起こることが多くなっています。例えば、食事中に誤嚥する、トイレからずり落ちた、靴を履こうとしてバランスを崩したなどです。
高齢者介護では安全配慮義務に最大限の配慮をするのは当然ですが、「生活ハイリスク」の高齢者介護の現場では介護事故をゼロにすることはできません。それは普通の暮らしの中にある「生活リスク」と同じことです。
高齢者のこうした「生活リスク」について国民的理解を広げる機会がないと、高齢者が本当に人間らしく、その人らしく生きることを逆に阻害することになります。高齢者の生活リスクについての共通理解を基礎に、普段に相互理解を深めるという努力が大切といえるかもしれません。
出典:篠田道子 著『改訂 質の高いケアマネジメント』中央法規出版、2008年