DVの治療・ケア
2010年07月01日 09:40
【Q】
DV被害者への対応は、どのようにすればよいのでしょうか? 具体的に教えてください。
【A】
DVの被害は、身体的な外傷やアザだけでなく、心の傷も深いものです。心的外傷後ストレス障害(PTSD)や抑うつ状態、フラッシュバック、不眠、頭痛、急性歯肉炎など、さまざまな影響が出てきます。さらに暴力を受け続けていると、感情も失せていき、能面のような無表情になってくるとか、話をしてもまとまらなくなり、自分が何を訴えたいのかが伝えられず、同じ話を繰り返してしまうようになるとか、物事の受け取り方にもゆがみが出て、コミュニケーションにも障害が起こってきます。
DVの被害者は、加害者の元から避難するだけでは傷ついた心身の回復はできません。何よりも自立することが優先することではありますが、なえた心を癒さなければ自立も難しいでしょう。できればDV対応ができる臨床心理士や精神保健福祉士、相談員、精神科医などと連携して精神科の治療や服薬、カウンセリング、あるいは、少し元気になっていけば、DV被害者の自助グループにも参加して同じ問題で苦しんでいる仲間と出会うことが最大のエンパワメントになります。
被害女性たちは孤独です。実親とのぬくもりのある関係を保っている人も少ないです。加害者から傷つけられ、義父母や実親から傷つけられ、二重三重の外傷を追いながら戦っている被害者もたくさんいます。DV被害の対応ができる専門家の数は少ないですが、それよりも身近な友人や仲間、女性相談員、保健師、助産師などが寄り添って、「あなたは悪くない」という傾聴が、最大の勇気を与えることになります。
出典:徳永雅子著『子ども虐待の予防とネットワーク―親子の支援と対応の手引き』中央法規出版、2007年