アディクションとは?
【Q】
児童虐待にかかわっている中で、「アディクション」という言葉をよく聞きます。これはどのような意味なのでしょうか?
【A】
虐待の家族病理を理解して、親子分離や再統合などの家族関係を修正していくためには、アディクション(アディクション・アプローチ)が1つのキーワードになります。依存症の総称をアディクションといいます。
アディクションは「繰り返す悪い癖」という意味で、好んである習慣を繰り返すうちに、陶酔(心地よい快体験)を感じるようになって、習慣の維持そのものが目的となっていきます。ある種の強迫的、反復的な考えが取りついていくので、自分の意志ではブレーキをかけることができなくなり、コントロール不能な事態に陥ります。アディクションというキーワードは、1950年WHOの専門委員会が、アルコールや薬物依存症に対して正式に用いるようになりました。アディクションには、以下の3つの種類があります。
(1)物質嗜癖(サブスタンス・アディクション)
アルコール・薬物・食べ物・ニコチンなどの物質に依存することです。アルコール依存、薬物依存(シンナー、覚せい剤、コカイン、咳止めシロップ、マリファナ、鎮痛剤、睡眠薬、ブタンガス)、摂食障害(拒食・過食)、ニコチン依存などがあります。
(2)行為過程嗜癖(プロセス・アディクション)
ある行為のプロセス(過程)に依存することで、ギャンブル依存(パチンコ、マージャン、競輪、競馬、競艇)、浪費癖、繰り返される暴力(家庭内暴力、高齢者虐待、DV、子ども虐待)、習慣性逸脱行為(痴漢、のぞき見、盗癖)、仕事依存、株依存などです。
(3)関係嗜癖(リレーションシップ・アディクション)
ある特定の人との人間関係に依存する病気です。共依存(co-dependency)ともいいます。
出典:徳永 雅子著『子ども虐待の予防とネットワーク―親子の支援と対応の手引き』中央法規出版、2007年