精神疾患が疑われる虐待親への対応―身近な関係者のかかわり方
【Q】
精神疾患が疑われ、子どもへの虐待も疑われる親がいます。どのようなかかわり方をしていけばいいのでしょうか?
【A】
精神障害者は、地域に居住し、地域で支え合いながら治療できることが望ましいです。また、歴史的にも、入院中心の医療から地域で生活しながら社会復帰を目指すケアへと取り組んできた流れがあります。精神障害者が結婚し、子どもを出産する例も多々ありますし、出産後に精神疾患を発病することもあります。精神障害者が皆子どもを虐待するわけではありませんが、心を病んでいる状態で子育てしていくには困難も多くあります。その意味からは、ハイリスク事例として、関係者は安全な子育てができるように支援していくことが求められます。生活の場で、身近なこととして、偏見をもたず、差別しないでかかわるような子育て支援の地域ケアをつくることが大切です。
地域でよく接するのは統合失調症やうつ病ではないかと思われます。ここでは、統合失調症を例にして、身近な人などのかかわり方を述べていくことにします。
地域の関係者は、偏見や先入観をもたずに、親に関心を寄せることがまず大事になります。統合失調症の場合は、丁寧に接すれば他者との人間関係もつくりやすいです。あいさつ、自己紹介、立場、何のためにかかわろうとしているかを、まず伝えます。そして、地域の一員として受け入れます。できるだけ、家庭内に入れるような関係づくりをして、子どもと接するように対応するのです。
周囲の支援が適切であれば、在宅で子育てをすることも可能です。しかし、ハイリスク家族としての視点ももちながら、子どもにネグレクトや虐待が疑われるような言動があれば、発見した人が親に声をかけて相談者になります。「あなたが一番困っていることは何ですか?」などと尋ねます。何が起こっているのか、どうしたいのか、対象者のニーズは何かを確認します。しっかり話を聞くようにしますが、無理に聞き出そうとしないこと、避けようとしている話題には踏み込まないことがポイントです。子どものこと、親の問題、経済的な問題などは、相談場所があることは教えますが、具体的な相談は保健所や市町村の障害福祉担当者に伝えるようにすることが必要です。
出典:徳永 雅子著『子ども虐待の予防とネットワーク―親子の支援と対応の手引き』中央法規出版、2007年