虐待を防ぐには
2010年04月30日 10:30
【Q】
障害児施設の指導員をしています。施設職員による利用者への虐待が起こらないよう注意していますが、一人ひとりの心構えに任せている状況です。
【A】
虐待をしてやろうとして、虐待をする人はいません。第三者から見て虐待をしている人でも、当事者に虐待をしている意識はなく、目の前の相手、利用者を思ってしているのです。周りから見ていると判断基準が大きくずれている、狂っているとしか思えないことでも、当事者の意識のなかでは、このことをしっかりしてもらわなくては、このことを今躾けなければ、という思いがわきあがっているのです。
だから、すべての施設スタッフは、施設長も含めて「虐待」をしているといえます。私たちは無意識のうちに、虐待・差別をしているのです。いつでもそこから脱却することを考えていなければなりません。
私は、権利擁護は幸せなときにしかできないと考えています。自分は不幸である、真の力を認められていないなどと、運命を呪っているときには支援はできないと考えています。
このような状況に陥ることを防ぐには、スタッフを幸せにするしくみが必要です。スタッフが家族や友人に仕事場のことを自慢できるような「きっかけ」が必要です。このようなきっかけとしては、非日常的なイベントなどが適切でしょう。人は、仕事の中で幸せを感じるから、そのことを家族や仲間に話す(自慢する)のではなく、家族や仲間に話すから幸せを感じるのです。職場で幸せを感じるきっかけを一人ひとりのスタッフに提供することで、権利侵害や虐待から決別することができるのです。
(出典:内藤 晃著『施設長の資格!』中央法規出版、2009年、pp.52~54、pp.176~177)