旅行とボランティア
【Q】
施設の旅行にボランティアの方々も参加してもらおうかと考えています。その際の注意事項について教えてください。
【A】
旅行中、さまざまな役割を担う職員にとって、ボランティアの参加は不可欠です。特に介護やイベントのために施設(事業所)にかかわっている地域住民のボランティアは、高齢者にとっても気心の知れた馴染みの関係であり、ありがたいことです。しかし、旅行費用を一部負担していただく場合には、施設側には「お客様」という一面もあり、旅行中の役割などへの配慮が必要となります。
また、同じ法人の職員が応援要員として参加するケースもあります。この場合、高齢者と面識がないため、旅行中の担当を決めるにあたって、高齢者が安心して快適に旅行を楽しむことができるように、パートナーの選択を検討します。
地域のボランティアと応援職員に対しては、旅行中、安全・円滑に旅行を進行させるため、主催施設の職員と同様の情報を共有することがポイントになります。情報共有の制度を高めるためには、旅行の実施前にスタッフ全員による打ち合わせを行います。しかし、どうしても打ち合わせができない場合には、事前に資料を渡して内容の事前理解を図ります。
ただし、個人情報に類する資料は、個人情報保護のため、旅行当日に渡すことが前提です。そして、旅行終了時点で回収します。
情報の共有化が欠けていると、忙しいスタッフと何をすればよいのかわからないスタッフに二分され、高齢者や家族に不安や不満を与えてしまうことになりかねません。
●家族やボランティアとの旅行前の情報共有資料
(1)旅行当日の動きとスタッフの役割分担
(2)参加者の個人データ
(3)旅行中の関係機関の連絡先
(4)立ち寄り先(宿泊先、食事場所、トイレ休憩の場所)、救急医療機関(立ち寄り先の最寄りの医療機関)、タクシー会社(立ち寄り先の最寄りのタクシー会社)
(5)旅行中の責任者、旅行幹事など、主な職員の携帯電話番号(通常「旅のしおり」に記載)
(6)緊急時マニュアル
(7)事故防止マニュアル
(8)緊急時の連絡体制(組織図)
●ボランティア利用の目的
・地域交流の推進
・参加者の心理的安定
・旅行の盛り上がり
・旅行費用の削減と安価効果
出典:田中 義夫著『高齢者の外出・旅行サポートガイドブック』中央法規出版、2007年