「地域福祉」って何でしょうか?
【Q】
高齢者福祉や障害者福祉はイメージしやすいのですが、「地域福祉」とは、具体的にはどのようなことなのでしょうか?民生委員の立ち位置も含めて教えてください。
【A】
社会福祉法では、第1条で地域福祉を「地域における社会福祉」として位置づけています。つまり市町村における社会福祉の全体です。さらに、第4条で、「地域福祉の推進」を次のように具体的に規定しています。
「地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように、地域福祉の推進に努めなければならない。」
この規定のなかで大切なことは、地域福祉とは、①地域住民、②社会福祉を目的とする事業を経営する者、③社会福祉に関する活動を行う者、という三者が相互に協力して推進に努めるものであるということです。
このうち民生委員は、③社会福祉に関する活動を行う者に該当しますが、ここにはボランティア活動や市民活動をしている人たちもあてはまります。こうした幅広い人たちの力が結集することで地域福祉が推進されるという考え方を法律で位置づけたわけです。
第4条の根底に流れている考え方は、すべての人々を「地域社会を構成する一員として」受け入れるという理念です。このことを社会的包摂、あるいはソーシャルインクルージョンといいます。福祉サービスの利用者を特別視せずに、同じ地域住民として受け入れるということです。
また、福祉サービスを必要とする人たちが、「社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように」すること、この完全参加をめざすことをノーマライゼーションといいます。つまり生涯の有無、年齢や性別、国籍などを問わず“対等な人間”として共に生きる社会をつくることを意味します。
以上のことをまとめると、地域福祉とはさまざまな人々や機関の協力によって、社会的包摂と共生のまちづくりをそれぞれの地域において実現していくことをいいます。そして民生委員には、全国どこの地域においてもその一翼を担う役割が期待されています。
出典:小林雅彦・原田正樹著 『民生委員のための地域福祉活動Q&A』中央法規出版、2006年