バイステックの7原則(2)
【Q】
介護支援専門員の研修で「バイステックの7原則」というものがあると教わりました。ソーシャルワークの基本原則とのことですが、介護福祉士出身のためあまりよく知りません。くわしく教えてください。
【A】
4.受容の原則
対象者は否定的な感情のほうが強い場合が多く見られます。それらの否定的な感情をも、私たちはそのまま受け入れなければなりません。援助者が、いきなり対象者のネガティブな感情を否定したらどうなるでしょうか。おそらく対象者はとても嫌な感情を抱くでしょう。
援助者はまず、対象者のもっている感情、個性、思想、生活習慣などのすべてをそのまま受け入れるのです。そして先ほどの「統制された情緒的関与」と同じように、対象者の波長に合わせ、よき理解者として接するのです。
5.非審判的態度の原則
援助の場面で私たちは対象者の怠惰な生活を目の当たりにし、援助しても一向に改善されず、原因は自分自身の援助技術不足と分かっていても、そのもどかしさを対象者にぶつけてしまうこともあります。
人間にはいろいろな考え方があります。それらをすべて受け入れ、同調し、そのうえで感情を変化させていく、援助者はかなりの高等技術や倫理観を求められる職種です。間違っても対象者を非難して強制的に向きを変えさせるなどしてはなりません。
6.自己決定の原則
ケアマネジメントの目的は自らの生活を求めていくことと言えます。それは対象者が自ら決めることであり、援助者の私たちが決められることではありません。援助者は技術的に肯定的な方向へ導くことはできても、対象者がその方向へ行くことを求めなければ実行に移すことはできないのです。まずは援助の過程において、対象者自らが「そうなりたい」という意思表示をすることが重要なのです。援助者は、対象者自らが肯定的な思考をもてるようにし、方向性が示されたら、その方向に対象者を導いていくのです。対象者本人の自己決定に応じて私たち援助職は動くことができるという原則は知っておかねばならないことです。
7.秘密保持の原則
援助を行うためには対象者のあらゆる情報を必要とし、それらの情報を私たち援助者が受け取ることができる理由として、対象者と援助者との間に築かれる「信頼関係」があります。そのような信頼関係を維持していくのは私たち援助者の義務であるといえます。そのために、必ず守らなければならないことが「秘密保持」なのです。
ソーシャルワーク技法の「個別援助技術の基本原則」として位置づけられている「バイステックの7原則」。ケアマネジメントにおいても同様です。意識的にこれらの原則を援助技術のなかに取り入れてみてください。きっと新たな効果を生み出すことでしょう。
出典:能本 守康 著 『改訂 初めて学ぶケアマネジメントテキスト』 中央法規出版、2009年