グラフの見せ方
【Q】
同じ数字を見せる場合でも、グラフによってインパクトが随分異なるようです。見せ方のコツを教えてください。
【A】
データをグラフ化する最大のメリットは視覚に訴えることです。ですから、違いが明確にわかるように描くことが作成のコツです。
しかし、同じデータであっても、単位のとり方やカテゴリーの分け方によって、描かれたグラフの印象は大きく異なることがあります。たとえば、収入のヒストグラムを描くときに、横軸の階級の分割の仕方を100万円単位にするか、200万円単位にするか、あるいは50万円単位にするかでは、描かれるヒストグラムの印象はかなり違ったものになります。
ここでは、グラフの描き方の工夫について重要なことを示しておきます。
(1)変化のパタンを示す
グラフを描くことによって、大小の違いや変化の仕方に何らかのパタン(傾向)のあることを発見できれば、単に数値の変化を示す以上の価値があります。たとえば、「発熱者の1年間の月ごとの変化を折れ線グラフで描いてみたら、夏場の6月から9月にかけて減少するU字形曲線になる」ことがわかったならば、暑さ寒さなどの季節の要因が何らかの影響を与えると推定されるかもしれません。
このように、グラフの形状にU字形、V字形、M字形などと名称をつけることができれば、印象が強く残るとともに、データの持つ意味の価値も上がることになります。何らかの特徴を持ったパタンを示せるかどうかを工夫して描くことが、重要な意味をもつのです。
(2)強調点を目立たせる
円グラフや帯グラフでは、強調したい点を目立たせる工夫をすることが可能です。円グラフでは、その部分だけ切り取って大きく表示したり、帯グラフでは強調したいカテゴリーを第1カテゴリーにしたりするなどの工夫をします。
(3)目盛の工夫
統計的に有意差があるのに、グラフを描くと差が目立たないという場合があります。そのようなときには、縦軸の変量の目盛を差が強調されるように設定します。よく行われるのが、目盛の原点を0にしないという方法です。
たとえば、80と85という平均値のデータに有意な差があったとします。その場合に、原点を0、最大値を100、目盛の間隔を20としてグラフを描いてしまったら、違いがあるようには見えません。そこで原点を75、最大値を90、目盛の間隔は1として描けば、差を強調することができます。
ただしこの方法は、いつでも使用してよいというものではありません。というのも、逆に強調しすぎて、印象を操作してしまうことにもなるからです。ですから、この方法は安易に使用しないようにしてください。統計学的に有意差が確認されているような場合に、有意差のあることをグラフ上に示して描くためには許される表示法です。
出典:佐藤眞一編 『すぐに役立つ事例のまとめ方と発表のポイント』 中央法規出版、2006年