ケアマネジャーと他機関との連携
【Q】
介護の現場では「連携が重要」といわれていますが、特にケアマネジャーは他の機関とどのような連携をとっているのでしょうか。
【A】
介護保険が始まる以前からも保健・医療・福祉の「連携」は絶えず話題となっていましたが、介護保険の開始とケアマネジャーがケアマネジメントを行うことで「連携」の重要性や必要性がより明確となったといえます。その意味では、「連携」は常に古くて新しいテーマです。
ケアマネジャーは利用者にサービスを結びつけ、必要なサービスが継続して提供されるように絶えず連携をすることが必要になります。介護保険制度が始まった後は、ケアマネジャーが行う連携が法的に明確となり、連携の具体的な方法や書式が規定されています。以下、「連携」について次のような側面からみることにします。
■連携の対象
利用者・家族にとって必要なすべての社会資源を想定しています。つまり利用者の支援になんらかの関わりがある人や機関はその対象となるのです。介護保険制度でのサービス事業者はいうまでもなく、医療機関の主治医や看護師、理学療法士や医療ソーシャルワーカー等もこれに含まれます。民生委員や市町村役場の担当者、警察や消防署員も同様です。別世帯の家族や知人、近隣の住民、ボランティアやNPOの団体もまた、これに含まれます。
■連携の方法
ケアプラン作成を中心に考えると、介護サービスの利用やキャンセルに関して、そのつど連絡をすることになります。新規のケアプラン作成には訪問相談とアセスメントの結果、必要なサービスを提供する事業所を特定し、サービス提供が可能かどうか調査をすることから始まります。通常は、まず電話で確認することが主な方法といえます。また問い合わせの内容を明確化することや履歴を残すためにファックスで連絡をとることが適当な場合もあります。短期入所にいたっては必ずファックスで対応するところもあります。
さまざまなプロセスを経てから月予定であるサービス提供書をすべてのサービス事業所に交付することになります。交付のしかたは主に郵送で行いますが、これもファックスや手渡しにて行う場合もあります。
これらの業務を毎月利用者全員に行うことになりますが、月の途中でサービスの変更があったときにも同じように連絡をします。サービスの変更は、例えば「通所介護を利用し始めたら外出する意欲や元気が出てきたので、これまでの週2回から週3回に増やしたい」といったものから、「暑くなったので訪問介護で入浴介助もしてもらいたい」といった追加や変更、急な入院のためすべてのサービスを中止するなど、利用者のニーズや状況に即した対応が必要となります。基本的にはこれまでと同様に、それぞれのサービス事業者に電話等で連絡をとり、すべてのサービス提供書を交付することになります。
そして、利用者1人ひとりのケアプラン作成の要となるのが、サービス担当者会議です。このサービス担当者会議の開催によって初めてケアプランを「他職種協働で統合的に設計」することができるのです。
サービス担当者会議ではそれぞれのサービス担当者が集い、書面や電話だけではなく、お互いに顔を見ながら利用者の自立支援のために自由に意見交換をし、検討することに意味があります。介護保険制度も含めて人が人を援助する仕事では、実際に担当者と会って話すことの方が実に収穫が多いものです。お互いが顔なじみになることも、継続した効果的な支援が期待できます。このように連携の方法はさまざまであり、検討内容と必要に応じた取り組みが重要です。
■連携の目的
連携そのものの重要な目的は、情報と目標とを共有し、それぞれの専門職が業務を遂行することに尽きます。それぞれのサービス提供者が異なった情報をもっていたり、めざすところや着地点が異なっていては、有効で適切なサービスを提供することはできません。また、いわゆる困難事例に代表されるように、利用者・家族がサービスの利用に拒否的であったり、情報がきわめて断片的であったり、担当者との関係がこじれていたりするような場合でも、暫定的に目標を決めることや限られた情報から最適な方法を推論することも必要になります。時には適切で有効な情報がないこと事態をそれぞれの担当者が共有しながら、ケアマネジメントを進めることもあります。
出典:医療福祉相談研究会=編集 『<加除式>医療福祉相談ガイド』 中央法規出版、1988年