介護保険施設の活用のポイント
【Q】
同居している義母が脳梗塞で倒れ入院しました。1か月がたち、主治医よりそろそろ退院を、と言われています。左半身がマヒしており、自分で歩くことができず、また認知症もあるので目が離せません。義母を自宅に帰すとなると私しか介護をする者がいないのですが、私はまだ小さい子どもを抱え、今、自宅で介護することはとても困難です。どこか施設への入所を考えているのですが、どのようなところがよいのかわかりません。
【A】
介護保険施設には3つの種類がありますが、それぞれ配置されている職種や施設の目的・役割が違います。利用者の状況や目的をふまえ、どの施設を利用するのかを決めればよいと思います。医療行為やリハビリテーションがどの程度必要なのか、将来的に在宅復帰を望んでいるのか、入所をどの程度待てるのかなどにより、適切な施設を選択します。
まずは、入院中の病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)や介護支援専門員に相談してみるとよいでしょう。介護保険制度による要介護認定の申請もしなければなりません。1人で悩むのではなく、気軽に相談してみることです。
■施設活用のポイント
・利用目的をはっきりさせる
施設を選択する際には、生活する施設を希望するのか、在宅復帰に向け準備、リハビリをしたいのか、慢性期疾患の治療目的なのか、利用目的をはっきりさせることが大事です。
国は基本的には介護保険施設に対して、在宅復帰へ向けての取り組みを行うよう指導していますが、現実的に介護老人福祉施設は「終の棲家」としての役割を持っています。在宅生活への準備をしたいのであれば介護老人保健施設への入所を考え、医療が必要な人であれば介護療養型医療施設が適しているといえます。ただし、介護老人福祉施設は待機の期間も長いため、いったん介護老人保健施設へ入所し、介護老人福祉施設が空くのを待つということも現実的な手段として考えることができます。
・施設理念と介護の質
介護保険では、利用者に施設を選ぶ権利を提供することとなりました。入所までの待機期間を考えなければ、施設数の増加とともに利用者が選べる施設が増えてくることになります。
しかし介護職員の人数が変わらない、あるいは減っている状況の中で、入所者の重度化や、狭い意味での施設の営利追求の姿勢が、現在の介護の質を低めたり、介護職員への負担を増大させていることにもなっています。それは現実に介護職員の人材派遣の利用やパート職員の増大などとして現れています。
よい介護を提供してくれるかどうかの見極めはなかなか難しいと思いますが、そのポイントとしては、(1)施設の理念・方針が掲げられており、しかも職員に浸透していること、また施設入所の相談時、契約時に利用者に説明が行われていること、(2)定期的かつ適切に介護計画が立てられ、作成時に入所者、家族の意見を取り入れる機会や説明する機会を設けていること、(3)入所者や家族からの苦情をどんなことでも真摯に聞く態度およびシステムがあること、(4)入所者を規則で縛りつけていない、(5)職員の表情、態度にゆとりがあり、笑顔が多いなどを実施していれば、よい施設である可能性が高いといえます。
・施設サービスと在宅介護サービスの併用
先述したように、施設に入所したいと考えても、待機期間が長いとなかなか入所することができません。入所までの間の解決策として在宅介護サービスを利用することも1つの方法といえます。短期入所(ショートステイ)を定期的に利用することによって介護負担を減らすこともできます。
また、介護老人保健施設などは原則3か月から6か月程度で退所となりますが、施設によっては入所を定期的に利用することや(例えば農繁期のみの利用等)、次に入所する期間は、短期入所、通所介護(デイサービス)を組み合わせて利用することで、介護負担を軽減する取り組みをしています。
出典:医療福祉相談研究会=編集 『<加除式>医療福祉相談ガイド』 中央法規出版、1988年