数量化の意味
2009年12月24日 09:00
【Q】
事例発表では「数量化が大切」といわれます。数量化することの意味とは何ですか?
【A】
実験、調査、臨床によって観察した事実は、単にその印象を記述するだけでは、その客観性や累積性、さらには予測や介入の正当性を確保する上で問題となるばかりでなく、不適切な結論を導いてしまう可能性があるという意味では弊害にさえなることがあります。数量化は、こうした印象記述の問題を改善するために必要となるのです。
情報の数量化によって、どの人が得た情報であっても同一の価値を持つという意味で公共的客観性が保証され、また、同じ手続きで得た情報は同じ結果を保証するという意味での再検可能性が保証されたことになります。この2つは、科学的データとして不可欠の条件です。
数量化されたデータは、通常の科学的手続きにおいては事実の普遍性や一般性を記述するために有用となります。しかし、介護などの臨床場面では、逆に一般性からのズレを記述することが重要となることも多いかもしれません。
たとえば、食事量と体重の変化は比例関係にあるのが一般的な事実です。しかし、ある人は食事量が増えているにもかかわらず体重が増えていないばかりか、減少傾向という逆比例関係にあったとしましょう。この場合、この人には一般的な事情とは異なる何かが起こっていると考えることができるのではないでしょうか。そして、この人を観察することによって、排泄回数が異常に多いとか、徘徊する距離が非常に長いということが明らかになれば、食事量と体重の関係として一般に期待されるデータとは異なる数値を示すことの意味に迫ることができるのです。
出典:佐藤眞一 編『すぐに役立つ事例のまとめ方と発表のポイント』中央法規出版、2006年