下肢の疲労への対応
【Q】
介護現場は立ち仕事が多いので、勤務が終わるころには足がパンパンにむくんでしまいます。マッサージに行く時間もないので、できれば自分自身でできる疲労回復法を知りたいです。
【A】
皆さんが現場で履く靴は、足の指の長さや形に合っていますか。立ち仕事の多い介護職の皆さんは、下肢のむくみやだるさを訴えることが多いようです。下肢や足部の疲れは、介護者自身の負担感だけでなく、ケアの安全・安楽性に大きく影響します。足指をしっかり使ってバランスを保てない、疲労感で注意力が下するとき、利用者の移乗・移動動作を互いに安全・安楽に行うことは難しいでしょう。
足は、その筋肉を収縮させることで、静脈血を心臓に送り返すという役割があり、「第2の心臓」といわれています。下肢の最も抹消である足の裏をほぐすことで、さらに全身の血液循環がよくなって、むくみや、冷え、全身のだるさがとれ、体全体のリラックスが得られます。
足の指ほぐしは、指の変形の予防にも役立ちます。足裏は身体の縮図といわれており、足裏の痛みやしこりを感じる部位をもみほぐすことで、それに対応している内臓の諸器官も、徐々に症状が緩和するといわれています。
まずは足に注目しましょう。普段足をじっくり観察することはないだろうと思います。
足の指は曲がったり、変形していませんか。足は、指を開いて地面の変化に対して微妙にバランスをとって体重を支えています。足の指が萎縮したり変形して固くなっている状態ではこのバランス力が悪くなってしまいます。足裏や指をほぐすことを日常的に行うとともに、靴が足にあっていないのかもしにれないので、足に負担の少ない靴選びをしましょう。圧迫の強い靴下やストッキングを毎日着用することにより、変形を助長することもあります。以下の工夫で痛みが改善しない、変形がひどい時は、早めに足の専門医に相談をしましょう。
●足裏ほぐし体操の実践
環境:入浴時や就寝前、職場の休憩中などに行ってみましょう
入浴時…石鹸の泡をつけた状態。または浴槽の中
その他…足浴や蒸しタオルで温めてから
布団の上、椅子で。足の関節にハンドクリームなどをつけてから行っても良い
姿勢:あぐら、または片足を前に伸ばし、楽な姿勢を取ります。膝痛や腰痛のある人は椅子に座って行いましょう。特に腰痛のある人は同一姿勢を保つのは痛みを悪化させる要因にもなりかねませんので、体操の途中で楽な姿勢に変えたり、休憩するなど、無理をしないようにしましょう。心地よさを味わえる、ゆとりをもつことが大切です
(1)足首をまわす
左足と右手で握手。指の間に指を入れてください。入りにくい時は無理せず、上からつかむだけでもよいです。この状態で、足首を回してみましょう。
(2)足指の屈曲・伸展
第5指と第4指をもち、指間が十分開くようにして、指を屈曲・伸展を交互に行います。次に第4指と第3指の間→第3指と第2指の間→第2指と第1指の間を刺激する。
(3)足指を根元から回す
小指から、指の付け根を回します。ぐるぐると1本ずつ親指まで回していきます。
指の持ち方→親指と、人差し指の第2関節を曲げてはさむと安定して回せる。
(4)足指の付け根と先端をほぐす
足指の先端を、小指から親指に向かって,手のひら全体でさすります。次に指の付け根が屈曲・伸展するように、5指揃えて手のひらでほぐします。
(5)足裏の3大ツボを刺激する
両方の親指を重ねてツボに置き、息を吐きながら5秒間押し、息を吸いながら6秒かけて指を離し、圧を抜いていきます。指に気持ちを集中して行いましょう。
湧泉のツボ:足裏の中央より少し上にあり、5本の指を曲げた時にできるくぼみの真ん中にあります。湧泉は「命の湧く泉」、冷えやむくみ、全身疲労、だるさに大変効果的といわれています。
足心のツボ:足裏中央のくぼみ、土踏まずの真ん中にあります。全身の疲れやだるさ、足のむくみに効くといわれています。
失眠のツボ:かかとの真ん中。踵骨にぶつかるので親指が痛くないように、軽く一回押し、そのまわりを押します。不眠やイライラに効くといわれています。
(6)足の裏たたき
片手でこぶしをつくります。こぶしの側面で使って、手首の力を抜いてトントントンと軽くたたきます。さらに、指の付け根を片方の手でそらせてしっかりたたきます。
(7)足背~膝上までさすり上げる
(8)ふくらはぎのツボを刺激する
息を吐きながら、両親指を重ねてツボに置き、息を吐きながら5秒間押し、息を吸いながら6秒間かけて指を離し、圧を抜いていきます。指に気持ちを集中して行いましょう。
承筋のツボ…ふくらはぎの一番盛り上がっているあたりにあります。膝痛・腰痛・背中の痛みに効果があるといわれています。
承山のツボ…ふくらはぎの真ん中で、ひ腹筋が人の字に分かれているくぼみの中央にあります。こむらがえり(ひ腹筋のけいれん)や腰痛、坐骨神経痛に効果があるといわれています。
(9)仰向けになって手足を振る
仰向けになって、両手両足を天井の方向に挙げ、手足の関節の力を抜き、息を吐きながら小刻みに振ります。20~60秒間振った後、両手両足を静止し、手足末端から血流が体感に向かって流れていくようなイメージを味わいます(10秒間以上)。両手両足を下げ、全身の力を抜き、心地よいと感じる姿勢になります。
(10)足裏や足全体の感覚を味わう。
足裏ほぐし体操の後、どんな感じがするのか、目を閉じて,自分のからだの感覚に意識を向けてください。ぽかぽかしたり、軽くなった感じが得られるでしょう。
出典:『こころもからだもスッキリ! 一人でできる介護のストレス解消法』中央法規出版、2008年