利用者を励ますことに抵抗があるのですが…
2009年09月10日 09:00
【Q】
コーチングでは相手を励ますことを否定していませんが、利用者に「がんばって」と言うことに抵抗があり、躊躇してしまいます。安易な励ましはよくないのではないでしょうか?
【A】
確かに、ひどくふさぎ込んでいる人やうつ病の人など、心理療法や心理カウンセリングの対象になるような人にとって、安易な励ましは禁物でしょう。共感して心を癒すことが、まず何よりも必要になります。
ただし、医療サービスや福祉サービスの利用者のすべてが、心を病んでいるわけではありません。がんばって社会復帰しようと決意した人に、その気持ちに寄り添いながら「がんばってくださいね」と言葉をかけてどこが悪いのでしょうか。「がんばらなくてもいいですよ」と言うほうが、利用者の気持ちを逆なですることになると思えるのです。
心の癒しを目指す心理カウンセリングとは対照的に、がんばる人をサポートするのがコーチングです。人は疲れたときに、誰でも癒されたいと思うでしょう。しかし、癒しを中心としたがんばらない人生で一生を終えることに、満足できるものではありません。もっとよい暮らしがしたい、もっとよい仕事がしたい、夢を実現したい、自己実現したいと、多くの人は癒された後に思うはずです。がんばらないこともがんばることも、どちらも人生には必要だといえます。
出典:『対人援助のためのコーチング-利用者の自己決定とやる気をサポート』中央法規出版、2007年