「危機状態」とはどのようなもの?
2009年09月14日 09:00
【Q】
精神障害者に対しては、当事者の危機に介入することが大切と聞きますが、そもそも、「危機」の状態とはどのようなものなのでしょうか?
【A】
危機とは、人がそれまでにもっていた危機への対処法では対応しきれない課題に直面しバランスを保つことができなくなった状態を指します。危機内容には、人生の発展過程で誰もが直面する出来事である結婚、就職、進学、転居など、ライフイベントとしてある一定の予測可能なもののほか、これとは別に、災害や事故、自殺、病気などの予測されない事態があります。このように危機は、予測可能であるかどうかにかかわらず、生活のあらゆる場面において、誰にも起こりえる普遍的な出来事といえます。
精神障害者については、その直面する生活のしづらさを、症状や病理ではなく、人間に共通する人生において避けることのできない危機として認識することが大切です。生活のしづらさという危機のメッセージは、時には攻撃や感情の爆発、またはひきこもるなど、周囲に不安を与える歓迎されざる人としてみなされがちですが、そのようなときにこそ、いつでも、誰でも即応できるように、当事者も含め、住民参加のチームを編成して、コンサルテーションを実施しておくこと、そのことが精神障害者の地域生活支援における危機予防機能となります。
そのためには、相互交流の機会と場を、精神障害者とともに創り、相互の理解を深めながら、住民との友好的で信頼しあえるパートナーシップを形成する必要があります。
出典:『精神障害者の相互支援システムの展開』中央法規出版、2008年