ニーズの表記について
【Q】
ケアプランの第2表「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」の書き方に困っています。「~したい」とポジティブな表記とするように言われていますが、必ずしもそう表現できないこともあるのですが……。
【A】
ニーズとは、「生活上の問題や自立を阻害する要因、改善の可能性、悪化の危険性について専門的視点で分析したもの」+利用者の意見や意向」を加味した結果、抽出されるものです。つまり、利用者の意向を尊重しつつ、課題分析(アセスメント)の結果をすり合わせていくプロセスが求められます。
自立を阻害する問題点やマイナス要因を曖昧にして、希望的な表現のみ強調するという方法は、果たして自立支援に効果的なのか、という疑問符がつきます。マイナス要因を直視し、改善の可能性や悪化の危険性を検討し、マイナス要因が改善されれば、自立した生活が可能になる(あるいは近づく)のであれば、改善に向かってケアチーム全員が努力する真摯な対応も必要となるでしょう。また、モニタリングの視点から考えると、要因等が生活課題に明記され、目標にも反映されていると、目標達成度やサービスの適切性などが客観的に測定されやすいというメリットもあります。
大切なのは徒に表記に拘泥することをやめ、専門的視点で検討した自立を阻害する要因を曖昧にするのではなく、利用者の希望に寄り添いながらも、利用者の望む生活(利益)を大局的に考えることです。
ニーズのとらえ方は多面的なものです。大きな話になりますが、介護保険制度やケアマネジメントは現在進行中であり、実践のなかから得られた英知・ノウハウを積み重ねて、それをベースにした学問体系が構築されるものです。ケアプランの細部まで書き方を規定するようでは、学問的な発展も望めないのではないでしょうか。
出典:篠田道子 著『改訂 質の高いケアマネジメント』中央法規出版、2008年