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どうなる? 介護保険

認知症の人と成年後見制度

 3月14日、東京地方裁判所は、「成年後見人」がついた人は選挙権を失うと定めた公職選挙法の規定に違憲判決を出しました。
 新聞の社説は「成年後見裁判 違憲判決は当然だ」(2013.03.17毎日新聞)、「政治参加に道を開け 選挙権と後見制」(2013.03.15東京新聞)など「成年被後見人選挙権訴訟」の違憲判決を支持しています。しかし、公職選挙法を担当する新藤義孝・総務大臣は「国を当事者とする訴訟は法務省が窓口になりますから、法務省と協議してまいりたい」(3月15日「新藤総務大臣閣議後記者会見の概要」)とコメントするのにとどめました。
 「成年後見関係事件の概況(2011年1~12月)」(最高裁判所事務総局家庭局)によると、「成年後見人」などがつく“法定後見”の申し立ては3万757件、申し立てが認められたのは2万8,617件と報告されています。
 原告はダウン症のため知的障害があるそうですが、“法定後見”の対象になるのは「認知症、知的障害、精神障害などで判断能力の不十分な」人とされています。

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「判断能力が不十分」な人はどのくらい?
 2000年4月、介護保険サービスとともに成年後見制度はスタートしました。
 認知症、知的障害、精神障害などで「判断能力の不十分」な人が、不動産や預貯金などの財産管理、介護サービスや施設入所の契約締結、遺産分割協議などで不利益をこうむらないよう、また、悪徳商法などにだまされないよう、「保護し、支援する」制度とされています。
 「認知症高齢者の日常生活自立度II」以上の人は280万人(全国厚生労働関係部局長会議(2013.02.20)資料「5.認知症施策について」より)、18歳以上で知的障害者のための療育手帳を持つ人は65万2,118人(厚生労働省「2011年度福祉行政報告例の概況」より)、精神障害者保健福祉手帳を持つ人は63万5,048人(厚生労働省「2011年度衛生行政報告例の概況」より)となっています。
 これだけでも400万人を超えますが、障害者手帳を申請していない人や、「認知症高齢者の日常生活自立度I」の人、そして、介護認定を申請していない人は含まれません。

申し立ての理由は預貯金管理、介護保険契約
 「成年後見関係事件の概況(2011年1~12月)」では、申し立てをするのは本人の子どもが1万1,867件(38%)、兄弟姉妹が4,374件(14%)、その他の親族が4,360件(14%)、市区町村長が3,680件(12%)と報告しています。
 申し立てが行なわれた本人は、65歳以上が男性で66%、女性で86%で、高齢女性の多さが際立っています。
 申し立ての理由は、「預貯金の管理・解約」が2万4,895件と圧倒的に多く、「介護保険契約(施設入所等のため)」が9,890件と続きます。
 また、「成年後見人等」(成年後見人、補佐人、補助人)に選任されたのは、配偶者や親、子、兄弟姉妹、親族など家族関係者が約56%で、「親族以外の第三者」は司法書士、弁護士、社会福祉士の順になっています。
 なお、2012年度介護保険制度改定で、老人福祉法に「後見等に係る体制の整備等」が追加されました。これに先立ち、厚生労働省は2011年度から認知症対策等総合支援事業のひとつとして「市民後見推進事業」を予算化し、「市民後見人養成研修」で市民後見人を増やすことにしています。
 しかし、市民後見人の研修を修了しても直接、後見人にはなれず、市区町村などの家庭裁判所への推薦が必要で、2011年に家庭裁判所が「成年後見人等」に選任した市民後見人は92人です。

申し立ての理由は預貯金管理、介護保険契約
 今回の地裁判決を受けて公職選挙法が改定され、被後見人(成年後見人がついた人)の選挙権が認められ、成年後見制度を利用する人が増えることを期待したいものですが、一方で「成年後見人等」による預貯金などの着服事件も増えています。
 3月だけでも「おいの後見人に懲役5年求刑 保険金6800万円着服」(2013.03.05共同通信)、「元九弁連理事長、2600万円詐欺認める 福岡地裁」(2013.03.12産経新聞)、「成年後見人横領 損賠訴訟 監督人に賠償命令 大阪地裁堺支部」(2013.03.15毎日新聞)など、親族だけでなく弁護士などの第三者を含めて「成年後見人等」の犯罪事件が報道されています。
 2025年には「認知症高齢者の日常生活自立度II」以上は470万人と激増が予測されるなか、「判断能力の不十分」な人が安心して「保護し、支援」されるよう、公職選挙法の改定だけでなく、成年後見制度も見直しの必要に迫られているのではないでしょうか。

表 成年後見制度(法定後見制度)
成年後見制度法定後見制度
保佐補助後見
対象判断能力が
不十分な人
判断能力が
著しく不十分な人
判断能力が欠けている
のが通常の状態の人
申立人本人、配偶者、四親等内の親族、検察官など
市町村長
※補佐、補助は本人の同意が必要
成年後見人等の同意が必要な行為借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築などの行為
※日常生活に関する行為は除外
成年後見人等に与えられる代理権の範囲申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める
借金、保証人、不動産売買など「特定の法律行為」
財産に関する
すべての法律行為
申立件数3,708件1,144件2万5,905件
認容件数3,464件1,061件2万4,092件
最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(2011年1~12月)」より


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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