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どうなる? 介護保険

高齢者の“家計簿”

 2月19日、総務省統計局は『家計調査報告(家計収支編)2012年平均速報結果の概況』(以下、家計収支速報)を公表しました。
 『家計調査』は1953年から60年も続いている調査ですが、全国約9,000世帯を対象に、2人以上の世帯と単身世帯に分けて毎月、家計の収入・支出、貯蓄・負債を調査し、「家計収支編」と「貯蓄・負債編」が公表されています。
 2012年の「総世帯」の消費支出(日常生活に必要な商品やサービスを買うために払った金額)は、1世帯あたり24万7,651円(月平均)で、2011年に比べて0.2%増えています。このうち、「2人以上の世帯」は平均28万6,169円で1.1%増加し、「単身世帯」は平均15万6,450円で2.8%減少と報告されています。
 「高齢無職世帯」(60歳以上)の消費支出は20万5,629円で、単身無職世帯(ひとり暮らし)は14万3,060円、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)は23万9,878円となっています。
 なお、税金や社会保険料など“自由にならない支出”は、「非消費支出」と呼びます。
 2012年は、第1号介護保険料(65歳以上)が全国月平均4,160円から4,972円に、後期高齢者医療保険料(75歳以上)も全国月平均5,249円から5,561円に上がっています。
 2011年に比べて、単身無職世帯の月平均「非消費支出」は788円減っていますが、高齢夫婦無職世帯は842円増えています。

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60歳以上の「家計」は赤字
 『高齢社会白書』(内閣府)や『厚生労働白書』(厚生労働省)では、65歳以上の高齢者のいる世帯を「高齢世帯」と呼びますが、『家計調査』(総務省)は60歳以上としています。
 家計収支速報の「II.世帯属性別の家計収支」では、年代、世帯人数、職業、年収などさまざまな項目ごとに家計の状況を報告しています。
 「高齢無職世帯」の場合、実収入(年金給付など)と実支出(消費支出と非消費支出の合計)を差し引きした「不足分」は、ひとり暮らし(単身)で約3万円、高齢夫婦で約5万円です(表1参照)。
 不足分は、預貯金の取り崩し、仕送りなどが考えられますが、「仕送り金」はひとり暮らしで408円、高齢夫婦で398円となっています。

社会保険料の負担
 実収入は非消費支出分(直接税と社会保険料)を含めた総額ですが、「高齢世帯」(60歳以上)の全体(総世帯)では月平均約16万円、ひとり暮らしは約11万円、高齢夫婦は約19万円です。
 第1号介護保険料は利用者やサービスの増加とともに上昇しますが、「高齢無職世帯」の実収入に占める社会保険料(介護保険料や医療保険料など)の割合をみると、全体では7.2%、ひとり暮らしは4.3%、高齢夫婦は8.0%になります(表2参照)。

働く世帯の社会保険料
 なお、調査対象世帯のうち働く世帯(勤労者世帯)を年収に応じて5段階に分けたデータでは、第1階級(年収352万円未満)と第5階級(年収828万円以上)で、実収入は3.26倍、非消費支出は5.18倍の開きがあります。非消費支出のうち、直接税は7.84倍、社会保険料は3.89倍と開き方が異なります。
 実収入に占める社会保険料の割合は平均10.3%で、年収別には8.9%から10.7%までの幅になります(表3参照)。
 なお、働く世帯の社会保険料の動きでは、2012年度は国民年金保険料(月額15,020円から14,980円へ)と雇用保険料(一般被保険者負担分1000分の6から1000分の5へ)の引下げがある一方、第2号介護保険料(本人負担分1000分の 7.55から7.75へ)のほか、厚生年金保険料(本人負担分8.206% から8.383%へ)と健康保険(本人負担分4.75%から5.00%へ)は引き上げられました。

介護保険料のゆくえ
 2月20日に厚生労働省が開催した全国厚生労働関係部局長会議の老健局資料では、「第5期(2012~2014年度)保険料基準額(月額)の保険者分布」が示され、第1号介護保険料は全国保険者平均4,972円、市区町村(保険者)によって最低額2,800円から最高額6,680円まで3,880円の開きがあることが示されています。
 「重点事項6.社会保障と税の一体改革における介護保険制度の対応について」では、2025年度の第1号介護保険料は現在の6割増の月額8,200円程度と推計しています。
 また、「世代間・世代内の負担の公平性の観点に立った制度の見直し」として、(1)介護保険料の低所得者軽減強化、(2)介護納付金(第2号介護保険料)の総報酬割導入、(3)利用者負担の在り方(現役並み所得がある人の利用者負担、補足給付における資産の勘案、多床室の給付範囲)を検討事項に挙げています。
 「保険者機能の発揮」とはなにか、今後に注目したいと思います。

表1 高齢世帯の家計(月平均額)
高齢無職世帯の家計収支実収入実支出不足分
高齢無職総世帯
60歳以上
18万1,028円22万8,819円4万7,791円
可処分所得
15万7,838円
消費支出非消費支出
20万5,629円2万3,190円
単身無職世帯
60歳以上
12万1,542円15万3,830円3万2,288円
可処分所得
11万0,772円
消費支出非消費支出
14万3,060円1万0,770円
高齢夫婦無職世帯
夫65歳以上
妻60歳以上
21万8,722円27万0,395円5万1,674円
可処分所得
18万8,205円
消費支出非消費支出
23万9,878円3万0,517円
総務省『家計調査報告(家計収支編)2012年平均速報』「世帯属性別の家計収支」可処分所得=実収入-非消費支出
表2 高齢世帯の家計に占める社会保険料(月平均額)
可処分所得と社会保険料実収入非消費支出実収入に占める社会保険料の割合
直接税社会保険料
高齢無職総世帯
60歳以上
18万1,028円2万3,190円7.2%
1万0,099円1万3,058円
単身無職世帯
60歳以上
12万1,542円1万0,770円4.3%
5,502円5,259円
高齢夫婦無職世帯
夫65歳以上 妻60歳以上
21万8,722円3万0,517円8.0%
1万3,073円1万7,393円
総務省『家計調査報告(家計収支編)2012年平均速報』「世帯属性別の家計収支」
表3 働く世帯の家計に占める社会保険料(月平均額)
年間収入五分位階級別実収入非消費支出実収入に占める社会保険料の割合
直接税社会保険料
平均46万7,774円8万3,923円10.3%
 3万5,770円4万8,070円
第Ⅰ階級
年収352万円未満
23万9,999円3万2,015円8.9%
 1万0,511円2万1,457円
第II階級
年収352~486万円未満
34万8,151円5万4,229円10.2%
 1万8,785円3万5,397円
第III階級
年収486~624万円未満
42万7,444円6万8,463円10.0%
 2万5,760円4万2,611円
第IV階級
年収624~828万円未満
53万9,960円9万8,981円10.7%
 4万1,417円5万7,511円
第V階級
年収828万円以上
78万3,316円16万5,927円10.6%
 8万2,376円8万3,374円
第Ⅰ階級と第Ⅴ階級の差3.26倍5.18倍7.84倍3.89倍 
総務省『家計調査報告(家計収支編)2012年平均速報』「世帯属性別の家計収支」

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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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