“地域ケア会議”の「ご意見募集」
前回、「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会における議論の中間的な整理」(厚生労働省老健局 以下、中間的整理)が公表され、各項目について(1)法律や政省令の改正、(2)第6期(2015~2017年度)介護報酬改定、(3)“実務的な検討会”で議論する予定であることを報告しました。
介護保険法など法律改正に関わることは、これまで社会保障審議会介護保険部会(山崎泰彦・部会長 以下、部会)で議論が行なわれていますが、1月21日に第42回が開催される予定です。
中間的整理のなかで、法律改正に関わるのは、「保険者である市区町村によるケアマネジャーの支援」を充実させるために、“地域ケア会議”を「法制度的な位置付けも含め、その制度的位置付けについて強化すべき」という提案です。
“地域ケア会議”とは?
パブリックコメント(介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関するご意見の募集)では、参照資料として検討会の第5回、第6回の資料が添付されています。
「地域ケア会議のイメージ」として、市町村が主治医・ケアマネジャー・サービス提供事業者の3者に“提案”し、3者が市区町村に“協働”するという基本構図が示されています。
市町村あるいは地域包括支援センター(保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャー)が“地域ケア会議”の設置・運営を行ない、主治医・ケアマネジャー・サービス提供事業者の3者を中心とする“実務者レベル”の構成員により、市町村が定める選定基準や担当ケアマネジャーの提案で出された「自立支援の視点がより必要な事例」と「課題解決が困難な事例」について、「要介護者の個人ごとに、要介護度の改善等の自立を目指した個別のケア方針を検討する」とあります。
利用者の了承と参加は不要?
“実務者レベル”の構成員は、3者のほか、在宅医療連携拠点(都道府県医師会・郡市医師会・各専門職能団体、病院・診療所、薬局、訪問看護ステーション)、自治会・地区社協、民生委員、NPO・民間事業者、警察・児童相談所・弁護士等の関係機関と実に多様です。
「事例により参加者は異なる」とただし書きがついていますが、利用者(被保険者)を除くすべての関係者が集まり、利用者の了承を得ることなく事例が“地域ケア会議”に提出され、“個別のケア方針”がまとめられ、「ケアプラン等に反映」することが構想されているように見えます。
“地域ケア会議”への危惧の声
中間的整理をまとめた「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」(田中滋・座長 以下、検討会)の第7回(2012.12.27)のパブリックコメントの報告(参考資料1)では、“地域ケア会議”と利用者の関係について、「書類だけで利用者の実際の状態を判断することは不可能」、「利用者のためのケアプランというより、保険者の意図を考えたケアプランを立てることになるのではないか」、「給付抑制という形で評価されることにならないよう留意すべき」という指摘があります。
また、“ケアマネジャーの支援”という“地域ケア会議”の目的については、「ケアマネジャーを評価するような会議にならないか危惧」、「ケアマネジャーの裁量権を奪いかねない」と心配する声もあります。
そして、“地域ケア会議”の成立について、「開催する市町村、地域包括支援センターの力量が不足しているのではないか」、「コーディネートができる人材が配置されているか疑問」、「実施時間や方法などに地域事情が絡み課題も多い」という意見があります。
さらなる検討が必要では?
パブリックコメントの報告が727件の意見を網羅して集約しているのか不明ですが、約517万人(「2011年度介護給付費実態調査の概況」より)の利用者、全国1580の保険者(「第5期市町村介護保険事業計画の策定過程等に係るアンケート調査結果」より)、そして介護・医療・地域福祉など多様な“実務者”と膨大な数の関係者に「要介護度の改善等の自立」を求める“地域ケア会議”の法定化については、さらに広く意見を集めて議論する必要があるのではないでしょうか。