在宅サービスの事業所調査
12月13日、「2011年介護サービス施設・事業所調査結果の概況」(厚生労働省大臣官房統計情報部 以下、事業所調査)が公表されました。
厚生労働省が介護保険制度について定期的に公表している調査は、表3のように6種類8調査にのぼります。
事業所調査は、介護保険サービス指定事業所の状況(経営主体、利用者数、従事者数など)を毎年報告しています。今回は2011年10月1日現在の施設・事業所の状況について延べ28万6,398カ所を対象に調査を行ない、回答のあった延べ24万140カ所(約84%)を集計しています。くわしいデータは、政府統計の総合窓口「2011年介護サービス施設・事業所調査」に掲載されています。
なお、20日に開催予定の第4回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会(田中滋・委員長)では、「介護サービス施設・事業所が行う高額投資に係る消費税負担の実態調査」の実施が検討されています。
会社経営が多い在宅サービス
介護保険サービスは制度上、在宅サービス、地域密着型サービス、施設サービスと3分類されています。そのうち、在宅サービスと地域密着型サービスは提供スタイルによって訪問系、通所系、短期入所系、居住系ともわけられます。
今回は利用者の7割を占める在宅サービスのうち、利用者数の多いケアマネジメントを含めて7サービスの事業所の状況をチェックしてみました。
事業所のおもな経営主体をみると、営利法人(会社)が経営する割合が高いのが特徴です。
福祉用具レンタルが約9割、ホームヘルプ・サービスで約6割が営利法人です。有料老人ホームなど特定施設入居者生活介護は、営利法人が約7割、社会福祉法人が約3割となります。デイサービスは、営利法人が約5割、社会福祉法人が約4割です。訪問看護は、医療法人が約4割ですが、営利法人も約3割です。
厚生労働省のプレスリリースには「調査方法を変更したこと等により、前年以前との年次比較は行なっていない」とあり、単純な比較はできないそうです。
しかし、介護保険がスタートした2000年の「事業所調査の概況」では、営利法人の割合は福祉用具レンタルが約8割、ホームヘルプ・サービスが約3割、デイサービスに至っては4.5%と1割に届きませんでした。
在宅サービスから社会福祉法人や地方公共団体が減り、営利法人が進出してきたことがみてとれます。
ホームヘルプ・サービスは月17.3回の訪問
2011年事業所調査では、在宅サービスで1人当たり利用回数(2011年9月)が多いのは、介護予防ホームヘルプ・サービスが6.1回、ホームヘルプ・サービスが17.3回と訪問系になります。
通所系は介護予防デイサービスが5.5回、デイサービスが8.5回、短期入所系(ショートステイ)は介護予防短期入所生活介護が5.0回、短期入所生活介護が9.6回で、通所系と短期入所系はほぼ同じくらいの利用回数です。
ひと月の平均利用回数が17.3回になるホームヘルプ・サービスでは、表2のように従事者数も38万9,240人で、利用者が一番多いデイサービスの37万4,281人をうわまわっています。また、ホームヘルプ・サービスは非常勤が27万7,644人で、従事者総数の7割を超えるという特徴もあります。
働く人の“兼務”の割合
介護従事者の調査データでは常勤・非常勤、あるいは常勤換算という数字がよく使われていますが、事業所調査では常勤で働く人をさらに「専従」と「兼務」にわけて示しています。
在宅サービスの従事者総数に占める「兼務」の割合は、短期入所生活介護の44%ともっとも高く、デイサービスの27%が続きます。
常勤者に占める「兼務」の割合でみると、短期入所生活介護は58%と約6割になります。デイサービスは50%、ホームヘルプ・サービスは39%で、非常勤が多いため、常勤者の「兼務」率が高くなっています。
今年10月には、2012年度介護報酬改定で新設された介護職員処遇改善加算の効果について介護従事者処遇状況等調査(第1回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会〈2012.05.29〉資料2-1)が実施され、介護分野で働く人を増やすことを目的に「キャリア段位制度(実践キャリアアップ)」厚生労働省老健局「介護職員の処遇改善等に関する懇談会」〈2012.05.11〉資料2)もスタートしていますが、「兼務」の実状と課題についても調査があればと思います。
事業所数 | 利用者 (予防含む) | 従事者 (総数) | おもな経営主体 | |||
営利法人 | 社会福祉法人 | |||||
ケアマネジメント | 27,705 | 2,609,498人 | 92,818人 | 41% | 29% | |
訪問系 | ||||||
ホームヘルプ・サービス | 21,315 | 1,081,434人 | 389,240人 | 59% | 24% | |
訪問看護 | 5,212 | 340,790人 | 44,802人 | 27% | ※医療法人 39.4% | |
通所系 | ||||||
デイサービス | 24,381 | 1,341,756人 | 374,281人 | 46% | 37% | |
短期入所系(ショートステイ) | ||||||
短期入所生活介護 | 7,515 | 287,822人 | 268,137人 | 8% | 85% | |
居住系 | ||||||
有料老人ホームなど | 3,165 | 135,734人 | 104,328人 | 68% | 26% | |
その他 | ||||||
福祉用具レンタル | 5,212 | 1,090,596人 | 27,577人 | 92% | 3% |
従事者数 | 常勤 | 非常勤 | 兼務 割合 | 非常勤 割合 | |||
専従 | 兼務 | ||||||
ケアマネジメント | 92,818人 | 53,232人 | 26,078人 | 13,508 | 28% | 15% | |
訪問系 | |||||||
ホームヘルプ・サービス | 389,240人 | 67,804人 | 43,792人 | 277,644人 | 11% | 71% | |
訪問看護 | 44,802人 | 18,129人 | 8,257人 | 18,416人 | 18% | 41% | |
通所系 | |||||||
デイサービス | 374,281人 | 99,695人 | 99,925人 | 174,661人 | 27% | 47% | |
短期入所系(ショートステイ) | |||||||
短期入所生活介護 | 268,137人 | 85,950人 | 118,755人 | 63,432人 | 44% | 24% | |
居住系 | |||||||
有料老人ホームなど | 104,328人 | 57,448人 | 15,387人 | 31,493人 | 15% | 30% | |
その他 | |||||||
福祉用具レンタル | 27,577人 | 17,541人 | 6,749人 | 3,287人 | 24% | 12% |
介護保険に係る既存の調査 | 調査時期 | 公表時期 | ||
1.介護サービス施設・事業所調査 | 毎年10月1日 | 翌々年春頃 | ||
開設・経営主体、定員、在所者数、利用者数、従事者数、居室等の状況等、 利用者の要介護度、認知症高齢者の日常生活自立度、障害高齢者の日常生活自立度等 | ||||
2.介護給付費実態調査 | 毎月 | 毎月、年報は翌年夏頃 | ||
性、年齢、要介護(要支援)状態区分、サービス種類別単位数・回数等、 サービス種類別計画単位数等 | ||||
3.介護事業実態調査等 | ||||
介護事業経営概況調査 | 介護報酬改定前々年7月1日 | 年末頃 | ||
介護事業経営実態調査 | 介護報酬改定前年の4月1日 | 秋頃 | ||
サービスの提供の状況等、居室・設備の状況等、職員配置、職員給与、収入・支出の状況等 | ||||
介護事業経営分析等調査 | ||||
調査内容は社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会で検討中 | ||||
4.介護従事者処遇状況等調査 | ||||
2009年度調査 | 2009年10月1日 | |||
2010年度調査 | 2010年7月1日 | |||
2012年度調査 | 2012年秋頃 | |||
給与等の引き上げ状況、交付金の申請状況等、給与等の引き上げ以外の処遇改善状況、 収支の状況、加算の状況、 従業者の性別・年齢・職種・勤続年数・実労働時間・賃金等 | ||||
5.介護保険事業状況報告 | 毎月 | 毎月、年報公表は翌々年夏頃 | ||
第1号被保険者数、認定者数、介護サービス受給者数、保険給付費、特定入所者介護サービス費等 | ||||
6.介護労働実態調査 | 毎年10月1日 | 翌年夏頃 | ||
法人、従業者数、採用者数・離職者数、従業員の過不足の状況等 |