“低所得者”はだれ?
市民福祉情報オフィス・ハスカップが参加する介護保険ホットライン企画委員会は11月14日~16日の3日間、毎日10時から16時まで、電話相談「介護保険ホットライン2012」を開設します。
2006年から毎年実施している電話相談ですが、介護保険を利用している人、介護している人、介護現場で働く人たちの声を集めて報告書を作成しています。電話番号は03-3235-2100です。介護保険制度についてのご意見や悩みなどをぜひ、お寄せください。
電話相談で毎年、気になるのは、「年金から介護保険料を天引きされるのは苦しい」、「認定を受けても1割負担の利用料が払えない」という認定を受けた高齢者の家計負担の訴えです。
厚生労働省年金局は10月29日、「2011年度年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)」(以下、年金受給者調査)を公表しましたが、平均年齢73.6歳の受給者の公的年金収入(共済組合の年金、恩給を含む)の年間平均は、男性179.4万円、女性94.3万円と報告しています。
「年収200万円未満」が低所得者
「生活保護のゆくえ」(10月3日更新)で紹介した社会保障審議会生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会(宮本太郎・部会長)は、高齢者に限らず「生活困窮者」をテーマとしていますが、収入に関しては「年収200万円未満」(第6回資料2「『生活支援戦略』中間まとめ」より)という記述があります。
みずほ情報総研株式会社の「低所得高齢者の住宅問題に関する調査研究事業報告書」(厚生労働省2011年度老人保健健康増進等事業)でも「低所得高齢者の『低所得』の水準について、世帯収入が200万円未満の所得階層と位置づける」とし、「年収200 万円以下を“低所得層”と定義した場合、これに該当する人数は、全体の37.8%と3 分の1以上を占めている」と報告しています。
厚生年金・共済年金の有無で大きな開き
年金受給者調査は、全国約3,000万人のうち東日本大震災で被災した岩手県、宮城県、福島県をのぞく約23,000人が対象となり、15,855件の回答があったそうです(回答率68.9%)。
総数(年間平均)でみると、年金収入は男性が179万4,000円、女性が94万3,000円で、85万1,000円の開きがあります(表1参照)。そのうち、200万円未満は男性が約55%、女性が約90%になります。
年金には厚生年金、共済年金、国民年金がありますが、「厚生年金・共済年金あり」の場合、男性が193万7,000円、女性が107万1,000円です。しかし、「厚生年金・共済年金なし」になると、男性が61万1,000円、女性が57万7,000円で、男女ともに100万円未満がほとんどになります(表2、表3参照)。
“応能負担”でいいのか?
国民年金しか収入がないといっても資産があるという指摘がよくありますが、年金受給者調査では、不動産、預貯金の有無も調べています。こちらは世帯単位のデータなので単純な比較ができませんが、「厚生年金・共済年金なし」の世帯で貯蓄が500万円未満は61.1%、100万円未満が35.9%になります。
詳しい分析は専門家にしてもらいたいと思いますが、介護保険料は生活保護を利用しない限り、負担段階による軽減措置があるといっても、年金から天引きされるしくみです。また、1割負担の利用料は、社会福祉法人の減免措置があるとはいえ、すべての市区町村(保険者)で実施されているわけではありません。
介護保険制度は利用した人が負担をする“応益負担”のしくみと言われていますが、“応能負担”との組み合わせを検討すべきではないでしょうか。
働く世代の“低所得者”
なお、働く世代(給与所得者)をみると、給与所得200万円以下が1,045万2,000人で、総数4,551万9,000人の約23%を占めています(労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会〈大橋勇雄・部会長〉第177回(2012.06.22)参考資料1より)。
母子家庭(75万9,000世帯)の平均年間就労収入は181万円で、公的支援などを含めて総所得は252.3万円になります(厚生労働省雇用均等・児童家庭局「2011年度母子家庭等対策の実施状況」より)。
また、「年収200万円未満」は単純計算すれば月収約17万円未満になります。介護現場で働く人のサービス別基本給(月給)は18万5,750円で、「生活困窮者」のラインに近いことになります(政府統計の総合窓口「2010年度介護従事者処遇状況等調査」2009年6月年俸・月給の者の基本給より)。
年齢や障害・病気の有無を超えて、「低所得者」や「生活困窮者」の問題を考える必要があるのではないでしょうか。
「年収200万円未満」が低所得者
「生活保護のゆくえ」(10月3日更新)で紹介した社会保障審議会生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会(宮本太郎・部会長)は、高齢者に限らず「生活困窮者」をテーマとしていますが、収入に関しては「年収200万円未満」(第6回資料2「『生活支援戦略』中間まとめ」より)という記述があります。
みずほ情報総研株式会社の「低所得高齢者の住宅問題に関する調査研究事業報告書」(厚生労働省2011年度老人保健健康増進等事業)でも「低所得高齢者の『低所得』の水準について、世帯収入が200万円未満の所得階層と位置づける」とし、「年収200 万円以下を“低所得層”と定義した場合、これに該当する人数は、全体の37.8%と3 分の1以上を占めている」と報告しています。
厚生年金・共済年金の有無で大きな開き
年金受給者調査は、全国約3,000万人のうち東日本大震災で被災した岩手県、宮城県、福島県をのぞく約23,000人が対象となり、15,855件の回答があったそうです(回答率68.9%)。
総数(年間平均)でみると、年金収入は男性が179万4,000円、女性が94万3,000円で、85万1,000円の開きがあります(表1参照)。そのうち、200万円未満は男性が約55%、女性が約90%になります。
年金には厚生年金、共済年金、国民年金がありますが、「厚生年金・共済年金あり」の場合、男性が193万7,000円、女性が107万1,000円です。しかし、「厚生年金・共済年金なし」になると、男性が61万1,000円、女性が57万7,000円で、男女ともに100万円未満がほとんどになります(表2、表3参照)。
“応能負担”でいいのか?
国民年金しか収入がないといっても資産があるという指摘がよくありますが、年金受給者調査では、不動産、預貯金の有無も調べています。こちらは世帯単位のデータなので単純な比較ができませんが、「厚生年金・共済年金なし」の世帯で貯蓄が500万円未満は61.1%、100万円未満が35.9%になります。
詳しい分析は専門家にしてもらいたいと思いますが、介護保険料は生活保護を利用しない限り、負担段階による軽減措置があるといっても、年金から天引きされるしくみです。また、1割負担の利用料は、社会福祉法人の減免措置があるとはいえ、すべての市区町村(保険者)で実施されているわけではありません。
介護保険制度は利用した人が負担をする“応益負担”のしくみと言われていますが、“応能負担”との組み合わせを検討すべきではないでしょうか。
働く世代の“低所得者”
なお、働く世代(給与所得者)をみると、給与所得200万円以下が1,045万2,000人で、総数4,551万9,000人の約23%を占めています(労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会〈大橋勇雄・部会長〉第177回(2012.06.22)参考資料1より)。
母子家庭(75万9,000世帯)の平均年間就労収入は181万円で、公的支援などを含めて総所得は252.3万円になります(厚生労働省雇用均等・児童家庭局「2011年度母子家庭等対策の実施状況」より)。
また、「年収200万円未満」は単純計算すれば月収約17万円未満になります。介護現場で働く人のサービス別基本給(月給)は18万5,750円で、「生活困窮者」のラインに近いことになります(政府統計の総合窓口「2010年度介護従事者処遇状況等調査」2009年6月年俸・月給の者の基本給より)。
年齢や障害・病気の有無を超えて、「低所得者」や「生活困窮者」の問題を考える必要があるのではないでしょうか。
総数 | 男性 | 女性 |
平均額 | 179.4万円 | 94.3万円 |
200万円未満 | 54.70% | 89.80% |
200~350万円 | 42.70% | 9.90% |
350万円以上 | 2.60% | 0.20% |
厚生年金・共済年金あり | 厚生年金・共済年金なし | |||
男性 | 女性 | 男性 | 女性 | |
平均額 | 193.7万円 | 107.1万円 | 61.1万円 | 57.7万円 |
200万円未満 | 49.20% | 89.80% | 100.00% | 100.00% |
200~350万円 | 47.80% | 9.90% | ||
350万円以上 | 2.90% | 0.20% |
厚生・共済年金なし | 男性 | 女性 |
50万円未満 | 33.10% | 40.30% |
50万円以上~100万円未満 | 65.60% | 58.90% |
100万円以上~150万円未満 | 1.20% | 0.70% |
150万円以上~200万円未満 | 0.10% | 0.00% |
本人及び配偶者の貯蓄額 | 総 数 | 不動産あり | 不動産なし |
なし | 18.40% | 12.70% | 27.40% |
100万円未満 | 17.50% | 15.20% | 23.00% |
100~300万円 | 16.60% | 17.80% | 18.10% |
300~500万円 | 8.60% | 12.50% | 6.50% |
500~1,000万円 | 10.80% | 15.30% | 8.70% |
1,000~2,000万円 | 5.50% | 9.60% | 3.00% |
2,000~3,000万円 | 1.90% | 3.10% | 1.40% |
3,000万円以上 | 1.90% | 4.00% | 0.20% |
不詳 | 19.00% | 9.70% | 11.50% |