人材確保と「キャリア段位制度」
東日本大震災から立ち直るために計上された「復興予算」が、被災地とは直接関係のない事業に使われている問題がクローズアップされていますが、10月27日、産経新聞は「キャリア・アップも復興予算に」と報じました。
「キャリア・アップ」は「実践キャリア・アップ戦略」のことで、「介護職員の資格」(5月16日更新)でも紹介しましたが、政府の「緊急雇用対策」にもとづく国家戦略プロジェクトのひとつです。
「新たな成長分野」(介護のほか、保育、農林水産、環境・エネルギー)を対象に、“新しい職業能力評価”をすると説明されています(首相官邸「雇用戦略対話」第5回会合資料3より)。
“新しい職業能力評価”は内閣府が準備している「キャリア段位制度(国家戦略・プロフェッショナル検定)」(以下、段位制度)のことで、介護分野では「知識」と「実践的スキル」のふたつの職業能力を7段階で評価し、レベル4以上を「介護プロフェッショナル」と名付けるとしています。
生活援助は“単なる身の回りの世話”?
10月15日、財務省「財政について聴く会」(財政制度等審議会財政制度分科会、吉川洋・会長)で、「社会保障予算(医療、介護等)」(資料1 2012年10月財務省主計局)が報告されました。
「介護」の項目では、(1)介護納付金(40~64歳の第2号介護保険料)に総報酬割を導入、(2)自己負担割合(現行1割)の見直し、(3)軽度者への給付の見直し、(4)地域支援事業の見直しが提案されています。
(3)の「軽度者介護」では要支援1~要介護2の表がつけられ、「単なる高齢者の身の回りの世話をすることにとどまっている側面もあることをどう考えるか」、「軽度者に対する給付は、見直しを図るべきではないか」とあります。
「ケアマネジャーのあり方」は“保険者機能の強化”にある?
10月10日、厚生労働省老健局は「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」(田中滋・座長 以下、検討会)の第6回を開きました。
今回は「ケアマネジャーのゆくえ(3)」(9月5日更新)で報告した第5回の「課題の整理(たたき台)」(資料1)でまとめた課題を解決するための具体案として「本検討会の議論を踏まえた主な課題と対応の方向性(案)」(資料1 以下、「方向性(案)」)が出され、自由意見の交換がおこなわれました。
なお、厚生労働省は翌11日から、パブリックコメント「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関するご意見の募集」(以下、パブリックコメント)を開始しています(応募方法はメール、ファックス、郵送)。締め切りは10月31日で、参考資料は上記の第5回資料1、第6回資料2になります。
意見は8項目ですが、介護保険法の改正が必要と示された「地域包括支援センターに地域ケア会議を制度的に位置づける」と「居宅介護支援事業所の指定を都道府県から市区町村に委譲する」のふたつが注目されます。
事業所の収支と給与の関係
10月3日、厚生労働省は「2011年介護事業経営実態調査の概要」(以下、実態調査)を公表し、「おもな調査結果」として(1)サービス別の収支はおおむね黒字、(2)サービス別の収支はおおむね改善、(3)サービス別の総収入に占める給与費の割合はおおむね減少、と報告しました。
「介護報酬改定の基礎資料」(2011年7月25日更新)でも紹介しましたが、実態調査は「介護報酬は各サービスの平均費用の額等を勘案して設定するため、各サービスの費用等の実態を明らかにし、介護報酬設定の基礎資料を得ることを目的」に介護報酬改定の前年に実施するとされ、2005年、2008年、2011年とおこなわれています。今年度の介護報酬改定を議論した社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)には2011年10月7日に開かれた第81回には、2011年実態調査の「速報値」が提出されました。
なお、介護報酬改定の2年前には同じ目的で「介護事業経営概況調査」が実施され、2004年、2007年、2010年と公表されています。
生活保護のゆくえ
9月28日、社会保障審議会社会保障審議会生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会(宮本太郎・部会長 以下、特別部会)の第8回が開かれ、「『生活支援戦略』に関する主な論点(案)」(資料1)として、新たな生活困窮者支援体系と生活保護制度の見直しというふたつのテーマに論点が示されました。
「生活支援戦略」は社会保障・税一体改革大綱(2012年2月17日閣議決定)に盛り込まれ、(1)生活困窮者への安定的な支援のため法制化も含めて検討する、(2)生活保護制度の不正受給対策を徹底するため生活保護法改正も含めて検討するために、7年間の中期プラン(2013~2019年)を策定する予定です。(2012年7月5日、厚生労働省「『生活支援戦略』中間まとめ」より)。
特別部会は、「生活困窮者対策と生活保護制度の見直しについて一体的に検討する専門部会」(第1回資料5)と位置づけられ、2011年4月から議論が続いています。また、同時期に、生活保護基準の定期的な評価・検証をおこなう目的で、社会保障審議会生活保護基準部会(駒村康平・部会長)も設置され、10月5日には第10回が開かれる予定です。