「情報公表制度」のリニューアル
9月10日、厚生労働省ホームページに「介護サービス情報公表システムが新しくなります!」が更新されました。
介護保険制度は「利用者の自己選択」を理念のひとつに掲げましたが、事業所の情報を提供するシステムは、2005年の介護保険法改正(以下、改正)で「介護サービス情報の公表」制度(以下、情報公表制度)ができるまで空白でした。このため、利用者や介護者が公的な情報を集めるには、保険者である市区町村やケアマネジャーによる情報の提供、独立行政法人福祉医療機構が運営するWAМネット「介護事業者情報」のインターネット情報(パソコンが使える場合)を検索するのが一般的でした。
2006年度からはじまった情報公表制度では、すべての指定事業所に「基本情報」と「調査情報」の公表と費用負担が義務づけられ、現在、全国の約24万事業所の情報が公開されています。公表方法はWAМネットと同じくインターネットで、これまでは介護サービス情報公表支援センター(一般社団法人シルバーサービス振興会)の「全国介護サービス情報公表サイト一覧」からのアクセスでしたが、10月1日から情報公表のサーバーが厚生労働省に一元化され、WAМネットは「各都道府県で公開される公表制度ページへのリンク等により情報提供を行う」ことになりました。
調査機関の訪問調査は年1回から任意に
情報公表制度の改正については「『介護サービス情報の公表』制度のゆくえ」(2011年5月16日更新)で紹介ましたが、8月31日、厚生労働省は介護サービス情報の公表制度担当者会議(以下、担当者会議)を開き、「介護サービス情報の公表制度の見直し及び新システムの概要」について都道府県の担当者に説明を行いました。
制度の見直しは、(1)調査方法と(2)公表方法のふたつがポイントとされています。
(1)では、これまで事業所が報告した「調査情報」を都道府県が事実かどうか確認する作業を年1回、行っていたのが、費用負担が大きいという批判を受けて、「都道府県が必要があると認める場合に調査を行う」に変わりました。つまり、都道府県の調査機関による訪問調査は任意となったわけです。また、「調査情報」の名称も「運営情報」に変更されます(表参照)。
改正を議論した2011年の通常国会では「調査が任意となった場合でも、公表されている情報の正確さを確保するため、最低限必要な調査を実施する」という附帯決議がつきました。このため、厚生労働省老健局振興課は今年3月13日、「『介護サービス情報の公表』制度における調査に関する指針策定のガイドライン」を通知しています。8月15日の時点で“調査指針”を策定したのは34都道県で、事業所から公表手数料を徴収するのは9県(2,000円~9,000円)、調査手数料を徴収するのは14県(12,000円~28,000円)と報告されています。
公表画面のリニューアル
担当者会議では、NTTコミュニケーションズ株式会社から(2)のインターネットの公表画面の変更の説明がおこなわれました。これまでの「調査情報」と「基本情報」の公表画面については、下記のような課題が挙げられました。
(1)情報量が多く、一目見ただけでは操作方法がわかりにくい
(2)膨大な事業所情報が、分類されずに同じページに羅列されており、知りたい内容が探しにくい
(3)調査員が調査に使用する調査票の文言がそのまま使用され、行政の視点となっており、そもそも利用者にとって理解しにくい
このため、2010年度に4県(宮城県、神奈川県、富山県、岡山県)で5サービスについてモデル事業を実施し、「新システム」を開発したそうです(厚生労働省「新システムの開発について」、「新システムの概要」より)。
気になる変更ポイント
公表画面の見直しのポイントのなかで気になるのは、「未掲載の事業所」と「地域包括支援センター事業所一覧」を掲載するかどうかは都道府県の任意となっていることです。担当者会議では、報告を拒否する事業所が存在し、指定取り消しは可能だが、都道府県が苦慮しているとの説明がありました。
「見やすくなる」のは歓迎ですが、インターネットという媒介しかないことも含めて課題は多々あります。今回のリニューアルでは「アンケートの常設」がおこなわれることになり、「さまざまな意見を、定期的にシステムに反映していくことができる仕組みとする」とされています。
サービス開始から6年遅れた情報公表制度は、さらに6年後に見直しがおこなわれたわけですが、アンケートを活用してすばやい反映をしてもらいたいものです。
基本情報 | 運営情報(旧・調査情報) | |
事業所 | 都道府県に報告 | 都道府県に報告 |
都道府県の調査機関が年1回、訪問調査 | ||
変更点 | 都道府県が必要と認めた場合に訪問調査 | |
公表内容 | 1.事業所の名称、所在地等 2.従事者に関するもの 3.提供サービスの内容 4.利用料等 5.法人情報 | 1.利用者の権利擁護の取組 2.サービスの質の確保の取組 3.相談・苦情等への対応 4.外部機関等との連携 5.適切な事業運営・管理の体制 6.安全・衛生管理等の体制 7.その他(従業者の研修の状況等) |